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衣装デザインは日系アメリカ人のシャーリー・クラタ アカデミー賞7冠「エブエブ」のファッションに注目

Mar 21, 2023.茂木美櫻Tokyo, JP
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「エブエブ」の衣装を手がけたシャーリー・クラタ@Jimmy Marble

3月12日、米国ハリウッドのドルビー・シアターを会場にして授賞式が行われた第95回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞など7部門を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(Everything Everywhere All At Once)』。日本でも「エブエブ」の愛称で話題を呼んでいる。

主人公は、父親の誕生日会と春節を兼ねたパーティーを準備する傍ら、経営するコインランドリーの税務申告をしなければならない主婦・エヴリン。ひょんなことから全宇宙の存亡をかけた戦いに巻き込まれ、強大な悪、ジョブ・トゥパキを倒せるのはエヴリンしかいないと告げられる。戦う方法は、マルチ・バースという並行世界を行き来して、別次元の自分の技能にアクセスするというもの。

ただし、マルチ・バースへのジャンプのエネルギーとなるのは「最強の変な行動」。突然、奇想天外なヒーローとなったエヴリンだが、目の前に立ちはだかったジョブ・トゥパキの姿は、なんと仲違いしていた娘のジョイ。12の世界を行き来するエキセントリックなSFストーリーとともに、家族の問題と向き合う一人の女性の物語が語られる、全く新しいハートフルアクションムービーだ。

『ムーンライト』や『ミッドサマー』などで知られる映画制作会社、A24の配給作品としても、史上最高の興行収入をあげた今作だが、そのヒットの一翼を担ったとも言えるのが、劇中に登場するユニークかつ鮮やかな衣装の数々だ。

本作の衣装を手がけたのは日系アメリカ人のシャーリー・クラタ(Shirley Kurata)。日本ではまだその名を目にすることは少ないが、「ケンゾー(KENZO)」や「オリバーピープルズ(Oliver Peoples)」の広告キャンペーンのスタイリング、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)やファレル・ウィリアムズ(Pharell Williams)の衣装などを手がける世界的スタイリストだ。彼女は、複数の世界観が並行して登場する「エブエブ」で、キャラクターを様々にスタイリングし、観客を楽しませた。

まず、物語の起点であるコインランドリーを経営するエヴリンとその夫、ウェイモンドの衣装は、チャイナタウンの人々の服装を参考にした。一方で、大女優として生きるエヴリンの衣装は、エヴリンを演じるミシェル・ヨー(Michelle Yeoh)の過去出演作『グリーン・デスティニー』や『花様年華』からインスピレーションを受けたという。

その他にも、カンフー服、ピザ屋や料理人のユニフォーム、指がホットドッグになった人間など、目まぐるしく変わるエブリンの姿。クラタは、カットが高速で切り替わるため、一つ一つの並行世界をはっきりと区別できるように、例えば「ホットドッグの宇宙」では全体をピンク、ベージュ、モーヴの配色にすることをこだわったり、それぞれ色の統一感を意識したとインタビュー等で話している。

© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved. 

さらに、何度もエヴリンの前に現れるジョブ・トゥパキのコスチュームも、まるでハイブランドのコレクションのような存在感を放ち、スクリーンを彩る。

クラタは、ジョブ・トゥパキが最初に登場した際のゴルフウェアについて、「スポーツや他の全てのことを完璧にこなすアジア系の娘」のステレオタイプを表したと話している。一方その後の、ピンクの髪にエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)をオマージュした衣装を合わせたスタイルは、母親への反抗心を表現しているといい、ただファッションとしての華やかさだけでなく、キャラクターの心情やストーリーにリンクした内容になっているのも見どころだ。

また劇中、日本のアニメやK−POPアイドルからインスパイアされたというカラフルな衣装も登場する。彼女は過去に、両親に日本の書店に連れて行かれ、そこで見た日本の雑誌のファッションに強い影響を受けたと話している。

他にも、作品中のキーとなる「ベーグルの宇宙」では、SF映画からの影響を感じさせる近未来的なホワイトのドレスが、終盤のバトルシーンでは、それまで劇中に出てきたコスチュームが合体したパワフルな衣装が登場。観客は、まるでファッションショーを見ているかのような感覚で映画を楽しむことができる。

主演のミシェル・ヨーがアジア系女優として初めて主演女優賞を受賞するなど、アカデミー賞の快挙から、まだ勢いが止まらない本作。まだ観ていない人はもちろん、一度観た人もぜひ、ストーリーだけでなくファッションにも注目してもう一度観て欲しい。

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■映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』概要
公開日:3月3日(金)
監督:ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート
出演:ミシェル・ヨー、ステファニー・スー、キー・ホイ・クァン
原題:Everything Everywhere All At Once/2022年/アメリカ/ビスタ/5.1chデジタル/140分/字幕翻訳:林完治
配給:ギャガ© 2021 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:https://gaga.ne.jp/eeaao/
公式Twitter/Instagram:@eeaaojp #映画エブエブ

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