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2021年にオープンした香港の美術館「M+」で開催中の、中国初のファッションリーダーにフォーカスした展覧会へ行ってみた

Oct 17, 2023.西山夏海Tokyo, JP
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撮影:セブツー

2021年末、香港にオープンした「M+」は、視覚芸術に焦点を当てたアジア最大級の大型美術館だ。劇場や博物館が整備され、新たに芸術文化の拠点となりつつある西九龍(ウエストカオルーン)文化地区に位置している。

同館は香港の新ランドマークとなっているが、日本では「プラダ 青山店」の設計で知られている、ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)らが設計を担当した。

複数のギャラリーやシアターなどを擁しており、今回は7月29日から来年の4月14日まで開催中の展覧会、『マダム・ソン:中国における先駆的なアートとファッション』(英表記:Madame Song: Pioneering Art and Fashion in China)に行ってみた。

宋懷桂(Song Huai-Kuei)は生前にはマダム・ソンとして知られ、1980年代から2000年代の中国で、芸術や映画、ファッション、音楽など様々な分野において活躍したカリスマ的人物だ。「中国初のファッションリーダー」とも言われている。展覧会では「アーティスト」や「モデル」、「俳優」、「文化大使」「起業家」などとしての彼女の様々な側面に着目し、彼女の人生を辿る。

会場に入って最初の空間では、《Beijing Love》(2010)の映像が流れるなか、彼女が実生活で着用していたピエール・カルダン(Pierre Cardin)によるイブニングドレスなどが展示される。《Beijing Love》は宋が亡くなった4年後に彼女に捧げるために製作された映像で、演者は展示してあるドレスを着用している。映像内で流れる特徴的な音楽が、展覧会のバックミュージックのように響いていた。

宋が実際に着用していた衣装や当時の写真の展示が続く。

次の章では、「アーティスト」としての側面が紹介される。

中華人民共和国で初の国際結婚をした彼女だが、夫でブルガリア人のテキスタイル・アーティスト、マリーン・ヴァルバノフ(Maryn Varbanov)との共作も制作している。

続いて「起業家」としての側面が紹介される。

1980年代にピエール・カルダンのブランドが中国に参入する際、宋は中国における代表としてビジネス界に参入した。また、カルダンが経営していた高級レストラン「マキシム・ド・パリ」を北京に出店する際にも協力したという。展示空間はレストランのように設られ、テーブルや椅子とともに当時の写真や使用されていたテーブルウェアなどが展示されていた。

このほか、中国の伝統文化を世界に発信する「文化大使」や「ファッショニスタ」などとしての側面が紹介される。

宋懷桂という一人の人物の複数のアイデンティティを掘り下げ、彼女の人生を辿ることで、中国が近代化していく過程がうかがえるような重層的な展覧会となっていた。アジアの視覚芸術全般を対象とする「M+」では、今後も分野を横断するような展示が行われるだろう。

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