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「ロエベ財団 クラフトプライズ2023」の大賞、特別賞に日本人が選出

May 19, 2023.茂木美櫻Tokyo, JP
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大賞を受賞した稲崎栄利子と受賞作品「Metanoia」(IMAGE by LOEWE)

ロエベ財団が主催する「ロエベ財団 クラフトプライズ2023(LOEWE FOUNDATION CRAFT PRIZE 2023)」の受賞者が、5月16日にニューヨークのノグチ美術館で発表された。稲崎栄利子が大賞、渡辺萌とドミニク・ジンクぺ(Dominique Zinkpé)が特別賞を受賞した。

ロエベ財団は、「ロエベ(LOEWE)」が詩歌、舞踏、写真、アート、クラフトの各ジャンルの遺産を保護するために1988年に設立した文化財団。それぞれのジャンルを中心に、クリエイターを教育、支援する目的で国際的なコンペティションを開催しており、クラフトプライズはクラフト部門の賞として2016年に設立された。ファイナリストの作品は、デザイン、建築、ジャーナリズム、キュレーションなど、様々な業界のプロフェッショナル13名で構成される審査委員会によって審査され、大賞受賞者には50,000ユーロ(約745万円)の賞金が与えられる。

今年は117の国と地域の職人から、2700作品以上の応募が集まった。ファイナリスト30名の中に、例年応募者が最も多い日本からは国別で最多の6人が選出されていた。日本人が大賞を受賞したのは、2019年の石塚源太の受賞以来4年ぶり。

大賞を受賞した稲崎栄利子は、1972年生まれの陶芸家。2017年から2019年にかけて国内5カ所を巡回した「驚異の超絶技巧!ー明治工芸から現代アートへ」展に出品された作品「Arcadia」で注目を浴び、陶芸作品の常識を超えるような繊細な造形技術が評価されてきた。

今回の受賞作品「Metanoia」は、1年以上の期間をかけて制作された。真っ白なセラミックで出来た数百個の極小パーツが複雑に配置されており、手作業の陶芸制作の限界に挑戦したような、まさに神業と言える作品だ。

特別賞に選出された渡部萌の「Transfer Surface」は、日本の東北地方で集めたクルミの木の皮から作られた箱型の作品。日本の生け花に使う花器を彷彿とさせ、シンプルながらも力強い魅力がある。ドミニク・ジンクぺの「The Watchers」は、彼女の母国であるベナン共和国のヨルバ族の伝統的な人形をモチーフにした木製の彫刻の複合体。伝統文化を現代的に再解釈し、アート作品として昇華した。

受賞作品を含むファイナリスト30名の作品は、ニューヨークのノグチ美術館にて5月17日から6月18日まで展示される。公式サイトでは、オンライン上で作品を楽しめるデジタルエキシビションも開催されている。

ロエベ財団は、4月から京都の400年以上続く釜師(茶道で用いる釜を鋳造する職人)である大西清右衛門家への活動支援を開始したことが記憶に新しい。2021年には三鷹の森ジブリ美術館を運営する徳間記念アニメーション文化財団とスポンサーシップ契約を締結するなど、日本および世界中の様々な価値ある文化の保存、発展を支援している。

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