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「生命」「失業」「消費」「金融システム」から占う今後

Apr 9, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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新型コロナウイルスの感染拡大の中心が中国から欧米に移り、日本の感染者及び死亡者もオーバーシュート寸前ということで、遂に4月7日に緊急事態宣言が安倍首相によってなされた。7都道府県を対象に5月6日まで、外出自粛要請や施設の使用制限などで人と人との接触機会の7〜8割減を目指すという内容だ。

イタリアのジュゼッペ・コンテ首相は「第二次次世界大戦に匹敵する危機」という現状認識を表明した。現状はまさにウイルスから命を守る戦いといった様相を呈している。感染者は全世界で150万人、死者は8万7000人という水準(4月9日現在)だ。とにかく感染が収束するまでは、「生命第一」が大方針ということになろう。命あってのモノダネである。

問題は感染収束後だ。まず失業が問題になる。すでに飲食業を中心に、大量の解雇による失業者が問題になり始めている。「失業保険」がもらえるように会社都合の一時解雇が欧米のみならず日本でも行われている。米国労働省が4月3日に発表した3月の失業率は4.4%。就業者数が前月から298万人減少し、失業者数が135万人増加した結果、失業率は前月(3.5%)より0.9%上昇して、2017年5月(4.4%)以来2年10ヵ月ぶりの高水準になった。4月はこれを大きく上回ることは確実で、この時点で一気に10%近い失業率になるのではないかと見られている。もし収束が5月以降にずれ込むことになると、5月はさらにとんでもない失業率になることが予想されている。

日本でも同様で、「生命」の次に問題になるのは「失業」=「雇用」だ。現在の日本の失業率は2.4%(今年1月)で、非正規雇用が労働者全体の37%を占めることを考えても、かなりの低水準でここ10年ほどは推移してきた。5%を超えたのは最近ではリーマン・ショック後の2009年(5.08%)、2010年(5.06%)の2年間だけ。しかし今回のコロナ・ショックでは当然この水準を大きく超えることが予想される。最近ではITバブル崩壊とデフレ・スパイラル入りの政府認定があった5.04%(2001年)、5.36%(2002年)、5.24%(2003年)の3年が思い出されるが、今回はとてもその水準では収まらないだろう。切りやすい非正規雇用を中心にして一気に6〜7%台に乗ってくるのではないだろうか。

「生命」「失業」の次に問題になってくるのは「消費」ということになってくるだろう。これも失業率が6〜7%台ということになれば、一気の回復というのは望むべくもない。その回復は高額品ゾーンと低下価格ゾーンを中心に進んでいくのだろうが、相変わらず中価格帯は一向に回復しないというような傾向は変わらないだろう。1990年以降右肩上がりで成長してきたラグジュアリー・ブランドとSPA(製販一体型低価格アパレル)ブランドが、コロナ・ショックで失った売り上げをどれぐらいで回復させるのか。リーマン・ショックの時は5年ほどを要したが今回はそれ以上かかるというのが妥当な見立てだろう。

なお本稿は4月9日時点でニューヨークダウ平均2万3433ドル、日経平均1万9307円をベースに考えているが、今回のコロナ・ショックで株価の下落が20%程度で済んでいるという想定のもとでの予想である。これがギリギリで、この下落率が30%を超えると「金融システム」の崩壊という要因が加わってくる。銀行や証券会社の倒産も十分考えられる。こうなるともう簡単には立ち直れないようなダメージが世界経済を襲うだろう。そうならないことを切に祈りたい。

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