
ルミネは8月7日、「エルメス(HERMES)」が、9月12日に本格開業する新商業施設「ニュウマン高輪(NEWoMan Takanawa)」に出店すると発表した。今回の新店舗は世界最大級の規模を誇り、同施設の目玉テナントとして注目を集めている。
「ニュウマン高輪」は、JR東日本が再開発を進める高輪ゲートウェイ駅に直結した複合商業施設で、ファッション、ビューティ、ライフスタイル、レストランなど、全165店舗が集結。ルミネにとっても過去最大規模の商業プロジェクトとなり、首都圏における新たなラグジュアリーマーケットの創出拠点として期待されている。
「エルメス」は、約50年にわたり旗艦店を構えてきた「西武池袋本店」から8月末で撤退する予定であり、それに代わる新たな基幹店舗として「ニュウマン高輪」を選んだ形だ。これまで百貨店や路面店を主軸にしてきた「エルメス」にとって、駅直結の商業施設「駅ビル型」への本格出店は国内初となる。
新店舗の名称は「Hermès in Colors(エルメス・イン・カラーズ)」。高輪という地の歴史と格式を意識した華やかな空間が設計され、コスメ・フレグランスの全コレクションをはじめ、スカーフ、ファッションアクセサリーなど、同ブランドが誇るアイコニックな商品を幅広く展開する予定だ。
では、「エルメス」はなぜ、「高輪」というラグジュアリーブランドにとって「未開の地」に、しかも駅直結の商業施設へ出店を決断したのか。その背景には3つの戦略的理由が考えられる。
まず、高輪ゲートウェイ駅という立地の将来性だ。新幹線が停車する品川駅や東京駅へのアクセスも良好で、羽田空港との接続性にも優れる同駅は、インバウンド観光客や地方都市からの訪問客の流入も見込める立地だ。今後、高輪ゲートウェイ駅は東京の新たな玄関口としての役割を担うポテンシャルを秘めている。
二つ目は、高輪という土地が持つラグジュアリーマーケットとの親和性である。高輪エリアは古くからの高級住宅街であり、グランドプリンスホテルや明治学院大学なども擁し、落ち着いた文化圏を形成している。富裕層の居住者や、高級ホテル滞在者をターゲットとした販売戦略も展開しやすい。
そして三つ目は、百貨店から駅ビル型施設への戦略転換だ。長年にわたり百貨店を販売チャネルの軸としてきた「エルメス」だが、近年は体験型リテールやダイレクトな顧客接点を重視する傾向が強まっている。駅直結でありながらも、単独店舗として独自の世界観を打ち出せる「ニュウマン高輪」は、「エルメス」にとって次世代の旗艦店にふさわしい環境といえるだろう。
「エルメス」の出店は、他のラグジュアリーブランドに対しても大きなインパクトとなる。今後、「エルメス」に続いてどのようなラグジュアリーブランドが同施設に参入するのか、ポスト百貨店時代における次世代型リテールの成否を占う事例として、注目が集まっている。