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レゾンディレクションに乗っ取られたキムラタンの新規事業とは?

Dec 28, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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キムラタンHPより

神戸に本社をおくベビー子供服を手掛けるキムラタンという東京証券取引所第一部に上場しているアパレルメーカーがある。1925年に創業者の木村担氏がベビー衣料の販売を始めたのがその始まりだ。1974年に大阪証券取引所第二部に上場、1984年には同第一部に指定替え、2013年には東証一部に指定替えになった。しかし、2016年3月期以降5期連続の営業損失および親会社株主に帰属する当期損失を計上している。まあ火の車状態と言っていい。ちなみに2020年3月本決算は、売上高49億1600万円(前年比21.6%増)、営業赤字4億5700万円(前年営業赤字6億2200万円)、経常赤字4億7900万円(前年経常赤字6億3900万円)、親会社株主に帰属する当期赤字5億8000万円(前年親会社株主に帰属する当期赤字6億5400万円)という惨憺たるものである。ここからのリカバリーはなかなか難しいものがありそうだ。

そのキムラタンが、クリスマスプレゼントということでもないだろうが、12月25日に第三者割り当てによる新株式の発行および新たな事業の開始並びに筆頭株主の異動に関する発表を行った。

それによると、同社は1月12日の払い込みで1株23円で1304万3400株(2億9734万8200円相当)を現在のキムラタン代表取締役の清川浩志氏に割り当てる。清川氏は、現在のキムラタンの筆頭株主であるレゾンディレクションに代わって、キムラタン株の13.27%を所有する筆頭株主になる。といっても、清川氏がレゾンディレクションの代表取締役なのである。この尼崎に本社をおくレゾンディレクションは企業再生を中心に投資を行う企業を名乗っているが、その実体は不動産業、物品賃貸業のようだ。その他にも建設業、飲食業、ゴルフ場経営なども手掛けているという。さらに「ギャルソン・ラ・レゾン(garçon la raison)」というブランドでアパレル事業も行っており、このあたりがキムラタンとの接点になったと思われる。清川浩志氏は1981年生まれで大阪大学経済学部卒。39歳の新進気鋭のマルチ実業家といったところか。キムラタンの代表取締役には2019年6月に就任した。

さて、このレゾンディレクションに企業再生を任せて、キムラタンが始める新事業というのは、不動産事業である。具体的には、清川氏に売却した新株による資金2億9700万円で姫路市にある物件(複数の戸建や集合住宅)の取得が検討されているという。さらにこれを担保にした資金で最大7億円まで不動産を購入予定だという。これもレゾンディレクションおよび清川氏の持っている不動産に関するノウハウを背景にしたものだと同社のニュースリリースは記している。

簡単に言えば、この名門キムラタンはすでにギブアップ状態だったが、コロナ禍で状況はさらに深刻化して、このレゾンディレクションのアドバイスで不動産業を始めるわけだが、大丈夫なのだろうか。

最近では、昨年9月7日付で東証二部上場のアパレルメーカーのラピーヌで、最大株主の佐々木ベジ氏が代表取締役会長に就任し、ラピーヌは佐々木氏が支配する機械製造メーカーのフリージア・マクロスのグループ入りするという出来事があった。要するにラピーヌは乗っ取られてしまったのだが、乗っ取られても企業再生してくれるのであれば、それなりに意味はあるが、会社の資産を処分し尽くすいわゆる整理屋の毒牙にかかってしまうようなことになる危険もある。そんな事態にラピーヌやキムラタンが巻き込まれないことを祈りたいものである。といっても、もう両社には再建を任せられる誇りと意欲のある人材はいないようであるが。

現在、キムラタンの株価は24円(12月28日現在)、すでに危険水準と言われる50円はとっくの昔に割り込んでいる。それでも上場廃止になる時価総額の基準である10億円に対して、現在その時価総額は32億円余りとまだ余裕はある。レゾンディレクションがキムラタンをどうしていくのか大いに見ものである。

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