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営業利益でトヨタを抜いたLVMH決算とその度重なる値上げの真相

Feb 12, 2022.三浦彰Tokyo, JP
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昨年7月にオープンした「ルイ・ヴィトン」の期間限定メンズ・ストア「テンポラリー・レジデンシー」©︎LOUIS VUITTON_TOMOYUKI KUSUNOSE

LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトングループ)は先月末に2021年12月期通期決算を発表したが、ティファニー買収の効果があったにしても、驚異的な数字で話題になっている。2021年12月決算、2020年12月決算、2019年12月決算の3年間を様々な項目で比較してみた。数字は1ユーロ=130円で円ベースに換算した。

・全社総売上高
2019年12月決算:6兆9771億円(+14.6%)
2020年12月決算:5兆8046億円(ー17.8%)
2021年12月決算:8兆3479億円(+43.8%)
※今回初めて買収によって加算されたティファニーの売り上げは6000億円程度ではないかと推定される。

・全社営業利益
2019年12月決算:1兆4955億円(+15.0%)
2020年12月決算:1兆796億円(ー27.8%)
2021年12月決算:2兆2296億円(+106.5%)
※トヨタ自動車の2021年3月決算は、売上高27兆2145億円で、営業利益は2兆1977億円だった。

・全社営業利益率
2019年12月決算:21.4%
2020年12月決算:18.6%
2021年12月決算:26.7%

・全社粗利益率
2019年12月決算:66.2%
2020年12月決算:64.5%
2021年12月決算:68.3%
※粗利益率である!!原価率ではない。念のため。

・ワインズ&スピリッツ部門  売上高/構成比
2019年12月:7248億円(10.4%)
2020年12月:6181億円(10.6%)
2021年12月:7766億円(9.3%)

・ファッション&レザーグッズ部門 売上高/構成比
2019年12月:2兆8908億円(41.4%)
2020年12月:2兆7569億円(47.5%)
2021年12月:4兆164億円(48.1%)

・パフューム&コスメティックス部門 売上高/構成比
2019年12月:8885億円(12.7%)
2020年12月:6822億円(11.8%)
2021年12月:8590億円(10.3%)

・ウォッチ&ジュエリー部門 売上高/構成比
2019年12月:5726億円(8.2%)
2020年12月:4362億円(7.5%)
2021年12月:1兆1653億円(14.0%)
当期から買収したティファニーの年商6000億円(筆者推定)が加わっている。

・セレクティブリテイリング部門 売上高/構成比
2019年12月:1兆9228億円(27.6%)
2020年12月:1兆3201億円(22.7%)
2021年12月:1兆5280億円(18.3%)
※今回の決算で、コロナ禍前の2019年の売り上げを超えられなかったのは、このセレクティブリテイリング部門のみだ。

2021年12月期が2020年12月期はもちろんのこと、コロナ禍前の2019年12月期に比較しても、19.6%増加しているのはティファニーの年商推定6000億円を考慮しても素晴らしいパフォーマンスである。

ブランドごとの売り上げの公表が相変わらずなされていないのだが、買収によって今回から計上されるようになったティファニーの売り上げは買収前の2019年1月期では44億4200ドル=5019億円(1ドル=113円換算)だったので、当期については6000億円程度(筆者推定)ではないかと思われるが、ウォッチ&ジュエリー部門の売上高の大幅な増加のかなりの部分はティファニー買収とみてよさそうだ。

またファッション&レザーグッズ部門においては、「ルイ・ヴィトン」「ディオール」「フェンディ」「セリーヌ」「ロエベ」といったメゾンが牽引しているという。また地域別では日本を除くアジア地区とアメリカが好調で、ヨーロッパが徐々に復調とある。地域別売上高は、アジア(日本を除く)35%、アメリカ26%ヨーロッパ(フランスを除く)15%、日本7%、フランス6%となっている。日本は第4四半期に前年を上回ったとあるが、第1四半期〜第3四半期は減収したようだ。アジアの中心的存在はもちろん中国でおそらく日本を除くアジア全体の3分の2以上を占め、成長率もダントツで高そうだで、アメリカとトップシェア争いをしている。ピーク時(1990年代後半)は国別で20%近くの売り上げのあった日本市場の凋落が目につく。

2021年12月期における部門別の営業利益率は:
ワインズ&スピリッツ:31.2%
ファッション&レザーグッズ:41.6%
パフューム&コスメティックス:10.4%
ウォッチ&ジュエリー:18.7%
セレクティブリテイリング:4.5%

とくにファッション&レザーグッズの営業利益率41.6%という信じられない高率に驚く。何かの間違いではないかと決算書を見直したほどだ。翌年には持ち越せない商材で、サイズのあるファッション(アパレル)を扱っていてこの超高率は、サイズがなくてキャリー(翌年以降も販売)できるハンドバッグの販売比率の高さを裏付けることになる。

こんな超高率利益率を誇りながら、コロナ禍が始まった2020年から現在までラグジュアリーブランドの、とくにファッション&レザーグッズは度重なる値上げを行なっている。小売店舗の閉鎖や営業時間短縮による販売個数の減少を恐れたためではないかと見られている。さらに最近では原材料の高騰を理由にした値上げも行われている。値上げしても売り上げには響く気配もないので「上げたもの勝ち」の状況になっている。特にファッション&レザーグッズの粗利益率41,6%はちょっと「儲けすぎ」ではないか、という声はあろう。しかし、「売れるのだから」という答えがそうした声を遮る。

もちろんこうした値上げが通るのは一部の最強ブランドだけである。ラグジュアリーブランドでも下手に値上げしたら客に逃げられるブランドが大半なのである。ましてや、一般のブランドでは、原材料の高騰を転嫁したくともできないというのが実情だろう。

いずれにしても、LVMHの好調はしばらく続きそうである。

 

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