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「職人が主役となるラグジュアリー」と考える「MIZEN」が鹿児島・霧島の木工アーティストの寳園純一とコラボ

Apr 23, 2023.高村 学Tokyo, JP
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左から「MIZEN」のディレクターの寺西俊輔、木工アーティストの寳園純一。 背景には今回のコラボ作品が並んでいる(撮影:セブツー)

「MIZEN(ミゼン)」は、鹿児島県の伝統的な工芸品のひとつである本場大島紬と木工アーティストの寳園純一とのコラボレーションをプロデュースした。「MIZEN」の青山本店で展示イベントを4月24日まで開催している。

本場大島紬は鉄分を豊富に含み、奄美大島にだけ存在する泥で絹糸を染色する伝統的な技術をベースに、艶のある見事な風合いに織り込んでいく。本場大島紬の歴史は古く、1300年以上も前まで遡るといい、今も職人たちがほとんどの工程を手作業で行っている。織物として出荷されるまでに30以上の工程があり、特に絣(かすり)と呼ばれる、図面通りの文様になるように先染めしたたて糸とよこ糸を手で織り込んでいく作業の緻密さは世界にも類がないほどだ。

今回、泥染作品を数多く発表してきた寳園純一が、「光の泥染」をテーマに新たなアート作品を手掛けた。寳園純一は鹿児島県の霧島を創作の拠点とし、自然にある樹木を使い、水面の波紋やあるいは激流をイメージした作品など、水の存在を意識した物作りを行なっている。2018年には「メゾン・エ・オブジェ・パリ」にも出展している。

今回のプロジェクトを手掛けた「MIZEN」ディレクターの寺西俊輔は、寳園純一の作品を初めて見た時に有機的な形状がとても印象的だったと語る。「空洞を通って光が遮断される部分と通過する部分があり、その二元性が面白いと感じました。本場大島紬も泥染されている部分とされていない部分があることで、独特の伝統的紋様が表現されています。そこに共通性を感じ、『光の泥染』をテーマに14の作品を作っていただきました」。

寳園純一は今回のコラボ作品すべてにクスノキを使い、泥染を施している。「相手にするのは樹木という自然の造形物なので、ここを染めたいのに染まらないといったもどかしさがありました。光が当たるところ、影になるところ、あるいは染まっているところとそうでないところと、そういったことの調和を考えながら作り上げていきました」と説明する。

さらに、今回のコラボレーション作品と同時に、オリジナルの本場大島紬の華絣「勝」を使用した洋服の新作も展示されている。「MIZEN」は、伝統技術の新しい価値を創造していくことを目的としたプロジェクトで、立ち上げ当初から日本各地の織物を採用し、コンテンポラリーなデザインに落とし込んできた。

新作のメンズコートは、本場大島紬を単仕立てにしたクラシカルで構築的な1枚に仕上がっている。縁起が良いとされる矢羽をあしらい、ラペルには螺鈿が使われている。レディスはケープ、ブルゾンとスカートがラインアップしており、本場大島紬とニットを組み合わせている。ニットのような伸縮性のある素材と着物を1枚に組み合わせるのは非常に難しい技術だが、新潟県にある工場が仕上げた。シャツのように軽い着心地だが、本場大島紬の重厚感とうまく融合している。

左)シングルレイヤーコート<衿・カフス螺鈿仕様>(メンズ):990,000円、右)アシンメトリックフレアスカート(レディス):363,000円、スラッシュブルゾン(レディス):374,000円 ※すべて受注生産(撮影:セブツー)

 

今回のコラボレーションは、「MIZEN」のプロジェクトとして第1弾となるが、今後も伝統技術の新しい価値の創造を目指してプロジェクトを実施していくという。専門的な高い技術を持った職人らの地位向上を目指し、「職人が主役となるラグジュアリー」「ふるさとの日常を次世代のラグジュアリー」だと考える「MIZEN」に今後も注目したい。

 

 

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