・営業利益:132億7500万円(同+40.7%)
・経常利益:130億4200万円(同+46.9%)
・当期純利益:63億6300万円(同+52.1%)
当時は12月決算であったが、今から考えると信じられないような数字で、ワールド、オンワード樫山に次ぐ業界第3位のポジションを固め、2000億円構想がぶち上げられていた。しかし、「売り上げの半分以上、下手したら3分の2は『バーバリー』。実はバーバリー商会だね」という陰口は当時から言われていた。当時の社長は三井物産出身の田中和夫氏。すでにバーバリー社のローズマリー・ブラボーCEOとは、「バーバリー2015年問題」(2015年6月にライセンス契約が終了するという1970締結の契約内容)についてテレビ電話などで話し合いが始められていたはずである。時間は十分にあった。このあたりから準備を進めて「ポスト・バーバリー」計画が本格的に、そして真剣に進められていたならばこんな事態に陥っていただろうか。しかし、有頂天になるような驚異的決算ではあった。
その後、2009年12月期に三陽商会はリーマン・ショック(2008年9月15日)の影響で赤字に転落している(2009年12月期営業赤字52億800万円)。しかしそこから5年でなんとかリカバリーして2014年12月には売上高1109億9600万円、営業利益102億1300万円を計上している。これが最後の輝きだったようだ。
そして2015年6月で無情にも「バーバリー」のライセンス契約は終了した。2016年12月期からは赤字決算が始まる。2017年12月期、2018年12月期、2019年2月期(決算期変更で14カ月変則決算)、2021年2月期そして今回の2022年2月期と惨たんたる赤字決算を続けている。
6期連続の赤字になるが、売り上げはほぼピークの3分の1。社員は恐らく3分の1以下になっているはずだ。三井物産から出向してゴールドウインを建て直した実績をひっさげて、2年前に火中の栗を拾うように72歳で登場した大江社長だが、もう残された時間は少ない。今年も来年もコロナ禍は続くし、その中で単なる黒字化ではなく、成長軌道の道筋をつけて離陸させなければならない。必要とされないブランドや企業は、消費者によって容赦なく見捨てられる時代である。度重なる早期退職募集で、優秀な人材ほど同社を見捨てていなくなっているかもしれない。そうした苦境の中で、三井グループのアパレル企業というような変な矜恃を捨てて、再建に向けて立ち上がって欲しいものである。
同社株の動向を見ていたら、この6期連続営業赤字が確定で「失望売り」が出るかと思ったら、週明けの3月28日からジリジリと買いが入っている。最悪期は脱したという見方が広がっているのだろうか。そうだとしたら祝着であるが。