三越伊勢丹ホールディングスは、伊勢丹府中店(2019年9月30日)、伊勢丹相模原店(2019年9月30日)、三越新潟店(2020年3月22日)の閉店を発表した(カッコ内は閉店予定日)。同社は、今年3月21日に伊勢丹松戸店を閉店したばかりだし、その1年前の2017年3月20日には三越千葉店を閉店している。いずれも赤字店舗であり、再生の見込みはなく当然の帰結ではある。この「閉店ラッシュ」は昨年3月7日に社長就任した杉江俊彦・社長の厳しい経営姿勢を表すものと捉えてよさそうだ。記者会見で同社の白井俊徳・取締役は「閉店は赤字幅の大きい店から。構造改革は今後も継続」と更なる閉鎖を示唆している。同社は昨期の最終損益で9億6,000万円の赤字を計上しており、早期に膿を出し切って、早く成長軌道に乗せたいというのが杉江社長の考え方だろう。
杉江社長は2017年3月7日に、大西洋・前社長の跡を引き継いで、三越伊勢丹ホールディングス社長に就任したが、大西社長時代にはなかなか手をつけられなかった赤字店の閉鎖に一気に着手したことになる。一般企業でもそうだが、リストラと店舗閉鎖は経営者にとって最も手をつけたくない施策だろう。ここに来て、なぜ一種のクーデターで杉江氏が大西氏に代わって経営の主導権を握ったのかが、わかるような気がするのだ。簡単に言えば「危機」に対する身構え方の相違だろう。松戸店、府中店、相模原店、新潟三越は、いずれも大西社長時代でもその存続についてマスコミからの質問が多数あった店舗。その度に「あり得ません」の一点張りだったが、そう言えたのもまだ業績がその赤字を支えることができたからだ。ここに来て、同社を始めとした百貨店ビジネスを取り巻く環境が激変していることが、危機感を募らせる原因となっているようだ。
同社の場合、基幹3店(伊勢丹新宿店、三越日本橋店、三越銀座店)が収益の大半を叩き出しているが、その基幹3店でも赤字店の赤字が支えられなくなっているのだろう。インバウンドでさらに成長が期待できる三越銀座店以外は、伸び悩んでいる伊勢丹新宿店、売り上げが減少している三越日本橋店というのが現状だ。百貨店が生き残る道としてネット販売と実店舗の融合をどの経営者も挙げているが、オムニチャネル戦略はまだ緒に就いたばかり。杉江社長のこの課題でどんな新基軸を見せるのか注目される。