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映画「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス」上映中

Jan 22, 2019.久米川一郎Tokyo, JP
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ドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス」(配給:KADOKAWA)が昨年12月28日から新宿バルト9、角川シネマ有楽町など全国の映画館で上映されている。ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD、1941年4月8日生まれ)についてファッション業界関係者には説明は不要だろうが、「パンク・ファッションの女王」としてあまりにも有名な存在だ。もともとは美術教師だったヴィヴィアンは、夫子がありながらパンクバンド「セックス・ピストルズ」のマネージャーだったマルコム・マクラーレン(Malcolm McLaren)の「追っかけ」になったことから、ファッションの世界に入った。「セックス・ピストルズ」の舞台衣裳を作ることからキャリアは始まったが、キングスロード430番地に構えたショップを拠点にしてパンク・ファッションの女王の地位を確立する。マルコムと別れてからは、パンクファッションからフランスの宮廷ファッションに感化されて、バッスル、クリノリン、コルセットなどを現代に蘇らせたファッションに移行した。特に日本では矢沢あいの漫画「NANA」およびその映画で、ヴィヴィアンのそうした現代化された宮廷ファッションが、ロリータ&ゴスロリ・ファッションとして描かれて大人気化した。

最近のヴィヴィアンは、北極圏保護を始めとした環境保護を推進するアクティヴィストとしての活動が注目され、昨年11月には東京でも「GET THE LIFE!」というイベントがラフォーレミュージアム原宿で開催されたばかりである。

現在上演中のドキュメンタリー映画ではそうしたヴィヴィアンの半生が描かれているが、中には興味深い発言が出演者から聞かれる。いくつかそうした発言を紹介しよう。

まず、1985年前後に資金ショートでほぼ倒産という事態に追い込まれたヴィヴィアン・ウエストウッド社だったが、CEOのカルロ・ダマリオ(Carlo D'Amario)が、知り合いのエリオ・フィオルッチ(Elio Fiorucci)に頼んでジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)から3000万ポンドの資金援助を受けるところまで漕ぎ着けたが、これを知って激怒したマルコム・マクラーレンがこの融資話を御破算にしてしまった話。たぶんこの件がヴィヴィアンとマクラーレンの仲を決定的に引き裂いたのではないかと思う。

2つ目の話は、このカルロ・ダマリオの拡大路線に反対したヴィヴィアンの長男のベンジャミンが母親に「カルロを取るのか、俺を取るのか」と迫ったら、ヴィヴィアンはカルロを取って、長男を切ったという話。普通は逆だと思うが、このあたりがヴィヴィアンらしい。

仕方なく会社を出ることになった長男ベンジャミンは、母親に日本の企業(伊藤忠商事)とのライセンス契約を結ばせた。これにはカルロが大反対したらしいが、ベンジャミンが押し切ったという。「これで母は一生食うのに困ることはなくなった」。伊藤忠とのライセンス契約にはこんな背景があったのだ。

最後のエピソード。スーパーモデルのケイト・モス(Kate Moss)の告白。「ヴィヴィアンが私にこう言った。もし『私が女を愛していたとするなら、あなた以外にないわね』」。イギリス人ということがあるかもしれないが、ヴィヴィアンとケイトはたしかに感じが似ていないでもない。ともかくファッション関係者のみならず、こんな面白い77歳のおばあちゃんの凄い生き様をぜひ見てほしい。(全編84分)

なお、DU BOOKSから唯一の自伝「VIVIENNE WESTWOOD ヴィヴィアン・ウェストウッド自伝」が発売中。

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