SVT:シューズへの思いは「ユルイエ」を立ち上げる前から常に頭のなかにありましたか。
サンユール・イエ(以下、サンユール):学生時代からユニークなヴィンテージのシューズ、イヤリング、リング、ブレスレットなどを集めるのがずっと趣味でした。自分のこうしたコレクションを眺めてみた時、私が本当に愛しているものがなにかはっきりわかりました。自分の好きなものを確実に理解したうえでブランドをスタートしたので、「ユルイエ」は私の価値観や世界観がすべて表現されています。
SVT:これまでのキャリアや経験について教えてください。
サンユール:韓国にある服飾学校のエスモード(Esmod)でレディスのファッションデザインを専攻していました。とても良い成績で卒業することができたので、デザイナーとして働くチャンスが数多くありましたが、海外ブランドを買い付ける企業で働くことにしました。様々な国で経験を積めると思ったからです。そのおかげで、仕事を通じて世界中のデザイナーたちとやりとりする機会に恵まれましたし、彼らのアトリエではどんな作業をしているのかを視察することもできました。ちょうどその頃、シューズ業界で働いていた先輩からシューズのデザインをしてみないかとオファーがあり、なんの躊躇もなくすぐ引き受けました。それまでシューズデザインの基礎を学んだことがなかったので、シューズ工房でこつこつ勉強をしました。
SVT:「ユルイエ」は、建築からインスパイアされているようにも見えます。例えば、ヒールは建物を支える柱のようです。これまでに建築を学んだことはありますか。
サンユール:建築を勉強したことはなく、あまり詳しくもないです。ですが、彫刻からインスピレーションを受けることは多く、何人かのアーティストのSNSアカウントをフォローしています。二次元というよりも三次元の方が興味があり、そしてリアリズムの代わりに抽象的な作品が好きです。
シューズは、革や釘、接着剤、ハンマーなどで作られる彫刻と同じく、とても小さいスケールです。洋服とは反対で、シューズはボディバランスのために重心をキープする必要があり、そしてヒールは軸や柱の役割が必要です。結局、私たちが作っているシューズは機能性と快適さが原則ではありますが、視覚効果を最大化するための彫刻作品として、爪先から踵までの新しいコンビネーションを作ることが好きです。
SVT:「ユルイエ」を代表するようなコレクションはありますか。
サンユール:季節ごとに異なるテーマを持っていますが、“オイスター(Oyster)”と呼ばれる最新のコレクションの一つは、間違いなく「ユルイエ」を代表するものです。多くの顧客は、オイスター・コレクションを通してブランドの理念とアイデンティティを理解してくれました。
SVT:Eコマースでの取引が増えてきています。 ブランドが本格的に立ち上がったのはいつですか、そしてブランドの存在感をどう広げてきましたか。
サンユール:「ユルイエ」は2011年から徐々に海外市場に参入していきました。販路は主に東京でした。 正確な時期を特定することはできませんが、海外のバイヤーから好意的な反応があったのは2016年頃でした。 その頃から「ユルイエ」の存在感はこれまで以上に増し、ヒールデザインが特徴のシグネチャーライン「Y」が誕生しました。 大胆でモダンなデザインは芸術性と商業性を取り入れているため、海外からは肯定的なフィードバックを数多くいただきました。 また、ブランドの存在感が拡大したもう1つの要因は、ブランド自体がトレンドに縛られていないので大胆なデザインへアプローチすることができたことです。
SVT:今後、予定されているコラボレーションや新たに計画していることはありますか。
サンユール:ブランドの拡大のために可能性のあるアイテムは絶えず研究しています。 例えば、ジュエリー、バッグ、香水は具体的に計画しています。「ユルイエ」の最大の特徴のひとつは「色の感覚」です。ですから、化粧品についても考えています。 2020年リゾートコレクションからは、「サンユール」のジュエリーとバッグを展開するつもりです。シューズとはまた違う方法で新しいアイテムを提案することを非常に楽しみにしています。