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「アメリ」の黒石奈央子CEOの人材育成術はうまくいくのか?

Sep 22, 2022.三浦彰Tokyo,JP
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ビーストーン社の黒石奈央子CEO

9月20日付の繊研新聞に、躍進するD2Cブランド「アメリ(Ameri)」とセレクトショップ「アメリ ヴィンテージ(Ameri VINTAGE)」を展開するビーストーン社の黒石奈央子CEO(最高責任者)の経営哲学についてのインタビュー記事とその「女王様」然としたポートレート写真が掲載されていて、思わず熟読してしまった。ビーストーンは2014年にECでブランドを立ち上げて8年になるが、年商は44億円(2022年7月期決算)で、従業員は60人近くまで増えたという。黒石CEOは「(私への)憧れは従業員の主体性を阻害する」と話す。「アメリ」の成長は、黒石CEOのインスタグラムでの発信による貢献が大きく、従業員の入社動機は黒石CEOへの共感や影響が大きいと繊研新聞記者は書いている。

それはそうだろう。やはり繊研新聞が2021年に服飾系専門学校生に行った意識調査のうちで「尊敬するファッション業界人ランキング」(同紙2021年8月21日号)では:1位山本耀司、2位川久保玲、3位渡辺直美、4位ココ・シャネル、5位アナ・ウィンター、6位ローラ、6位黒石奈央子、8位高田賢三、9位冨永愛、9位NIGO、11位柳井正、12位三宅一生だった。なんと高田賢三、冨永愛、NIGO、柳井正、三宅一生を抑えて、ローラと並んで堂々の6位入選なのだった。従業員のほとんどはこの奈央子サマに憧れてビーストーン社に入社してくるのだと思う。そこが黒石CEOには問題なのだろう。「ともに働く上では主体性を徹底的に問うのが人材育成や評価での信条だ」という。「必要とするのは、互いに尊敬し、対等に意見を交わせる関係性」だという。そうは言っても、奈央子サマ離れがそんな簡単にいくとは思えない。

言ってみれば、カリスマCEOのワンマン企業から、各人が自主性をもって会社の発展のために努力しなければならないということなのだが、そこが難しいのだ。今後の更なる発展のためにはまず「みんなの会社」にしなければならないと黒石CEOは感じているのだろう。この直感は正しい。

まず社名を変える必要があるのではないか。ビーストーンとは、黒石(ブラックストーン)の略語だろう。そして上場して社員持株制度をスタートするぐらいの制度上の仕組みを整えて、明確なインセンティブを与えない限りそうした意識はなかなか変えられないだろう。

「私への憧れは従業員の主体性を阻害する」という分析は正しい。インスタグラマーブランド、YouTuberブランドは、言ってみればアイドルブランドの範疇であり、アイドルブランドは賞味期限が切れれば未来がないことは黒石CEOが一番良く知っているはずだ。賞味期限を超えて、「普遍的なブランド」になるためには、実は黒石CEO自身も、「カリスマデザイナー兼カリスマCEO」から「賢明なる経営者」に変身しなければならないのだろう。
果たしてCEOも従業員も変身することはできるのだろうか。

同社の未来を注意深く観察したいと思う。

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