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日本撤退なら「GAP」の巨大利権を日本で引き継ぐのはどこだ?

Jun 20, 2023.三浦彰Tokyo, JP
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6月16日「セブツー」にアップした「銀座旗艦店閉店で分かったGAPの日本撤退近し!?」の記事に、ビジネスコンサルタントの小島健輔氏がFacebookで次のようにコメントしていた。「残念ですが時間の問題だと思います。アダストリアかどこかがFC契約して営業権を譲渡するのではないのでしょうか」とコメントしている。

熱狂的なGAPファン、とくにミッキーことミラード・ドレクスラーのGAP復活劇を高く評価する小島氏が言うのだから、日本撤退は間違いないと思うのだが、その後の担い手としてアダストリアの名前を挙げているのにはちょっと驚く。最近はマスターライセンシーの伊藤忠商事と手を組んで「Forever21」の名前だけ借りたライセンス商品を今春からスタートさせたアダストリアの名前をズバリ出して来ている。

今回の「GAP」にしても、アダストリアが手掛けるかどうかは別にして、まず伊藤忠商事がマスターになって「GAP」本体と何らかの契約をするということは十分に考えられるのではないだろうか。最近日本撤退ブランドを、米国オーセンティック・ブランズ・グループと組んで日本のアパレル関連企業に仲介している伊藤忠商事にとってはまさに格好の事案ではないだろうか。

ちょっと注意を喚起しておくと、「GAP」や「ユニクロ」をファストファッションと呼んでいる人が多い。しかし、「ZARA」「H&M」「GU」「SHEIN」などはパリコレ、ミラノコレなどのハイブランドのトレンドを安価にリメイクしているのでファストファッションという呼び名もある程度当たっているが、「GAP」や「ユニクロ」はファストファッションではない。「GAP」は中価格帯のキャラクターカジュアルだし、「ユニクロ」は低価格帯のべーシックカジュアルである。

それはともかく「GAP」の話に戻ると、確かに自分達に魅力的なブランドが無いアパレルメーカーにとって「GAP」というネームバリューは喉から手が出るほど欲しいだろう。かと言って「GAP」はSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel=アパレル製造小売業)を創業者のドナルド・フィッシャーが1987年に言い始めたSPAの最初のブランドであり、日本でライセンス生産して「百貨店へ卸す」というようなビジネス形態はかなり難しいと思う。ショッピングセンターへテナントとして入店するのがビジネスの本道であろう。だとすると、こうしたSPA型のビジネスも十分行っているアパレル企業でないと手掛けるのは難しい。そうすると東ならアダストリア、西ならパルグループホールディングスということになるが、企業体質から有名ブランドを高率の条件で扱うというビジネススキームはパルグループHDにはないだろう。となれば、やはりアダストリアというのは小島氏の卓見かもしれない。

しかし、いわゆる旧百貨店の卸売メーカーのオンワードHD、ワールド、TSIHD、三陽商会が動くということはないのだろうか。

日本では、ピーク時1000億円近いビジネスをしていた「GAP」だが、結局SPAブランドでも中価格帯のブランドは市場で生き残るのは難しいということなのだろう。10年以上前からGAP社の最大ブランドは社名と同じ「GAP」ではなく「OLD NAVY」になっていることからも分かる。

そういう意味では、中価格帯を生存領域にしている旧百貨店の卸売メーカーにとっては「GAP」は親和性があるかもしれない。何と言っても「GAP」の知名度は圧倒的なのである。日本市場の特性を知っている我々なら、GAPジャパンのような失敗はしないと思っていても不思議はないのである。

特に、「GAP」のSPAシステムにならって、製造・販売一体のSPARKS構想を1997年の社長就任以来提唱していた寺井秀蔵現シニア・チェアマンがいるワールドのことが思い出される。現在の寺井氏にどれだけ影響力があるかは分からないが、興味があることは間違いないだろう。

とにかく「GAP」日本撤退なら、盛時の勢いはないにしても、いまだに巨大なビジネスになる可能性は十分ある。すでに水面下で熾烈な獲得競争が行われているのではないか。この利権をどの企業が握るのか?アパレル業界地図が変わるかもしれない案件であり、大注目である。

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