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メガネスーパーをクビになった再建受負人の星﨑尚彦前社長の正体は?

Jun 6, 2023.三浦彰Tokyo, JP
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東京証券取引所は、東証スタンダード上場で眼鏡販売チェーン「メガネスーパー」を運営するビジョナリーホールディングス(以下、ビジョナリーHD)について5月31日付で監理銘柄に指定すると発表した。同社が第3四半期(2022年5月1日〜2023年1月31日)決算の法定提出期限となる6月1日までに第3四半期決算報告書を提出できない見込みになったためだ。6月13日までに同報告書を提出できない場合は同社は上場廃止になる。

ビジョナリーHDはなぜそんな事態に陥ったのかというと、星﨑尚彦(ほしざきなおひこ)前社長による企業価値を毀損する一連の行為の疑いについて、第三者委員会による調査に時間を要していることがその原因だ。

すでにビジョナリーHDは3月8日に星﨑尚彦氏の辞任を発表している。後任には2017年にメガネスーパー取締役就任、同年設立されたビジョナリーHDの社外取締役を務めてきた松本大輔氏が就任している。同社は「星﨑氏に関する情報提供があり、監査等委員が選定した外部専門家に調査を以来し調査を実施したが、その結果、同社の業務委託先その他取引先が、星﨑氏の実質的影響の下に経営されていたことに加えて、当社の取締役、執行役員の一部が出資している会社である可能性や当社グループの利益に反する可能性のある行為が認識された。今後当社は類似行為や連結財務諸表への影響の有無などについて第三者委員会による調査を行う」という。

この「情報提供」が発端になった今回の社長交代劇は、同社内における権力闘争に端を発したもののようだが、ここで星﨑尚彦氏のキャリアを振り返ってみよう。

星﨑氏は1966年10月27日生まれ、早稲田大学法学部卒業後、三井物産に入社。1999年に休職し私費でスイスのIMDビジネススクールに留学。同年12月に三井物産退社。IMDでMBA(経営学修士)を取得。2000年にフラー・ジャコー(スイスの宝飾メーカー)ジャパン社長、2003年にブルーノマリジャパン社長、2007年にスノーボードメーカーのバートンジャパン社長と外資系日本法人社長を歴任した。

そう言えば、私は、ブルーノマリジャパン社長就任の時にインタビューしたことがあった。インタビュー記事が「星﨑」ではなく「星崎」になっているというクレームがあったのを覚えている。豪放磊落そうだが意外に細かい人だなと思ったのを記憶している。

外資系ではあまり成果は上がっていないように思ったが、日本のアパレルメーカーのクレッジ社長に2012年就任。わずか18カ月でV字回復させたという。星﨑氏は2013年にメガネスーパーにクレッジ再建の実績をひっ下げて移籍。クレッジは「リップサービス」などを手掛けるアパレルメーカーだが、その後オルケスと社名を変えて、なんと2014年には経営破綻して民事再生法を申請。負債総額は約60億円と言われている大型倒産だ。このあたりには、事業再生コンサルタントのMITコーポレイトアドバイザリーサービス、双日、岐阜のアパレルメーカーのシンガポールなどが複雑にからんでいて、星﨑氏はクレッジの再建を果たしているかどうかにはちょっと疑問が残る。

星﨑氏はメガネスーパーに2013年6月に入社。7月には社長に選任されている。その後、8年連続赤字が続いていたメガネスーパーをわずか3年余で黒字化。「眼鏡を売る」より「目の健康を売る」というコンセプトで、低価格路線を捨てた検査や加工技術の高度化による高付加価値志向が黒字化の決め手になったようだ。2017年10月27日付でメガネスーパーを上場廃止とし、11月1日に持ち株会社ビジョナリーHDを東証ジャスダックに上場し、その後東証スタンダードに上場替えして現在に至っている。

当然、黒字化の後も、コロナ禍により2020年4月期は赤字決算、2022年4月期には営業赤字に陥っている。ここに来ての、前社長の業務上横領に発展しそうなスキャンダル発生で、ビジョナリーHDには暗雲が漂っている。果たして第三者委員会の調査結果がどうなるのか?第3四半期決算報告は6月13日まで間に合うのか?事態は緊迫している

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