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成長の止まった「しまむら」と成長企業になった「ワークマン」

Aug 9, 2019.久米川一郎Tokyo, JP
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滋賀県にあるワークマンの竜王流通センター

8月というと、12月本決算企業の半期決算発表などが上旬に行われるが、それ以外には大事件が起こらない限りさしたるニュースもなく、繊研新聞ではさまざまなランキングが連日紹介されている。例えば、8月5日号では2018年度専門店売上高ランキングが公開されている。そのトータル売上高(前年と比較可能な116社を対象)は、4兆7043億円。前年度に比べ1022億円増加しているが、トップの「ユニクロ(UNIQLO)」の増加分549億円が半分以上を占めているので、これで全体を語るのは少々危ない気もする。

こうしてランキングにしてみると、やはり気になるのは第2位のしまむらの前期比−3.3%(ファッションセンターしまむらの業態のみ)、第6位の青山商事の−2.3%(メンズウェア、レディスウェアもビジネスウェア事業のみ)、第11位のAOKIホールディングスの−3.4%(ファッション事業)、第13位赤ちゃん本舗の−2.0%である。第13位の赤ちゃん本舗だがこれは出生数がこれだけ減少すればやはりそうなのだろうと納得する。青山商事、AOKIホールディングスは多角化を進めているが、ビジネスウェアやファッション事業を取り上げてみると、それぞれ−2.3%や−3.4%の数字は人口動態にスライドしたものだと思えないこともない。しかし、どうにも首をかしげてしまうのがしまむらの−3.3%の減収だ。他の業態も合算した連結業績では2019年2月期では売上高5459億9600万円(−3.4%)で、営業利益は254億5100万円(−40.7%)、経常利益267億4500万円(−40.2%)、当期純利益159億9600万円(−46.2%)だった。−3.4%の減収で利益が前年の60%になっているのではない。利益を度外視して値引きを繰り返して売り上げだけはなんとか作ってみた結果、利益は前年の60%になってしまったということなのである、これは、かなり重症。たぶん今年2月の利益水準をキープするとなると売り上げはもう少し下がることになるのだろう。もう定価で売れる商品は限られてしまったということなのだ。あるいは、店舗が多過ぎるという結論が出ているのではないだろうか。いずれにしても、よほどのこと(例えば中国で大成功するとか)がない限り、もうしまむらの成長期は終わったと見てよいのだろう。例えば2017年5月19日で付けた終値は15980円だったが、現在は半分以下の7000円台で取り引きされている。株式市場もしまむらをもう成長企業とは見ていないのである。

一方、勢いということでは、作業着のナンバーワン専門店の「ワークマン(WORKMAN)」を上げなければならないだろう。売上高伸び率第1位はワークマンで前期比+19.4%、第2位はベイクルーズグループ同+10.3%、第3位はマッシュホールディングス同9.8%、第4位はトウキョウベース+9.2%、第5位は良品計画+8.9%、第6位はユニクロ+6.7%、第7位はジーユー(GU)+6.4%、第8位はパルグループホールディングス同+5.9%、第9位はサザビーリーグ同+5.7%、第10位はハートマーケット同+5.0%(1993年創業の前橋市に本社をおく婦人服専門店でAEON MALLなどに出店している。年商は100億円)だった。

ワークマンは、作業者ではない一般消費者向けのカジュアルウェア業態の「ワークマン プラス(WORKMAN Plus)」が消費者の圧倒的な支持を集めて出店を加速している。2020年3月末には、作業着との複合展開店も含めると167店になる見込みだ。2019年3月期は売上高669億6900万円(+19.4%)、営業利益135億2600万円(+27.6%)、経常利益147億5500万円(+24.5%)、当期純利益98億900万円(+25.1%)だったが、2020年3月期では売上高733億6000万円(+9.6%)、営業利益150億1000万円(+11.0%)、経常利益163億円(+10.5%)、当期純利益108億8000万円(+11.0%)を予想しているが、すでに上方修正は確実だ。久方振りにアパレル業界に登場した急成長ストーリーだ。株価も、「ワークマン プラス」が実験店レベルだった2017年あたりまでは1000円台だったが、現在は5000円台。同社は作業着の業界ではナンバーワン企業だが、この「ワークマン プラス」の業態でカジュアルウェアの成長企業という捉え方がなされているようだ。

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