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消滅可能性都市豊島区区長の「ヨドバシカメラ出店反対」の理由

Dec 23, 2022.三浦彰Tokyo,JP
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豊島区区長 高野之夫

セブン・アンド・アイ・ホールディングスは、11月11日同社の子会社そごう・西武を米国の不動産投資ファンドであるフォートレス・インベストメント・グループへ売却(売却額は2000億円超)すると発表。フォートレスはヨドバシカメラの親会社であるヨドバシホールディングスをビジネスパートナーにして、主に大都市圏のそごう・西武の旗艦店のメインフロアをヨドバシカメラに改装する計画だ。

現在家電量販店業界のランキングは(カッコ内は経常利益)
・1位 ヤマダホールディングス:1兆6193億円(741億円)
・2位 ビックカメラ:7923億円(208億円)
・3位 ヨドバシカメラ:7530億円(495億円)
・4位 ケーズホールディングス:7472億円(465億円)
・5位 エディオン:7137億円(215億円)
・6位 ノジマ:5649億円(358億円)
(出典DIAMOND Chain Store Online)

トップのヤマダホールディングスを2位〜5位が7000億円台で追う展開になっている。1997年3月期には業界首位になったコジマが2002年にはヤマダに首位を明け渡し、2012年には第7位まで転落していたコジマは業界第5位のビックカメラに買収され、ビックカメラ業界第2位に躍り出るなどまさしく戦国時代を思わせている。そして、天下統一を成し遂げて20年が経とうとしているヤマダの前に立ちはだかるのがヨドバシカメラである。ヨドバシカメラは池袋、渋谷といった大市場が空白区になっている。フォートレスとの連携によって、この空白地に大型旗艦店をオープンするというのがヨドバシカメラの戦略だったのである。その戦略は、思惑通りに進んだのだが、ここで思わぬ横槍が入った。

豊島区の高野之夫区長(84歳)が12月16日に記者会見を開き、西武百貨店池袋本店の低層階(1〜4階と推定される)にヨドバシカメラが出店することに反対を表明したのだ。区長いわく「西武百貨店池袋本店は池袋の象徴であり、西武百貨店の前は多くの人が行き交う。特に低層階は不特定多数の人が目にするので、街のイメージにも直結する。西武の低層階に入居するブランド店がヨドバシカメラになってしまったら街の印象が変わってしまう」と区長。同時に西武ホールディングスに同じ趣旨の嘆願書を提出した。

実は、豊島区は2014年5月東京23区では唯一日本創生会議によって「消滅可能性都市」に選ばれた。消滅可能性都市とは、若年女性人口が2040年に5割以上減少する市町村のことだが、豊島区が選ばれた要因は「転出入が活発で定住率が低い」「単身赴任が多く、その半数が若年世代」など。これに奮起した豊島区は「女性にやさしいまちづくり担当課」を設置し、その長を民間公募した。その後オウンドメディア「としまscope」や「としまぐらし会議」を開始するなど着々と「消滅」の危機を回避する施策を連発した。特に西武百貨店からサンシャインを結ぶエリアには緑を配し公園を整備、新設するなど豊島区のシンボルとして注力してきた。その音頭を取ったのが高野区長だったのだ。2014年当時、27万人台だった人口は2022年には29万人台へ急増している。

そうした涙ぐましい区の努力に冷水を浴びせかけるような動きが今回のフォートレス&ヨドバシカメラの「西武百貨店池袋店乗っ取り改装」だと言えなくもない。もちろんそうした資本の論理や民間企業の動きに区が「待った!」をかけることなど不可能だが、一矢を報いることにはなるかもしれない。

すでに池袋東口の西武池袋本店の近くには、ビックカメラ池袋本店、ヤマダデンキ日本総本店など家電量販店の旗艦店とも言える巨大店舗が立ち並んでいる。ここにヨドバシカメラの旗艦店の登場で、池袋東口駅前は家電量販店のメッカになってしまう。消滅可能性都市からの脱出に成功したと思っていたのにこれはヒドい仕打ちだと高野区長がイキリ立つのも当然と言えば当然ではある。
これに対して、ヨドバシホールディングスの広報担当者は「現時点ではコメントを差し控えたい」としているという。もう結論は見えているようだが、街づくりの難しさを改めて考えさせられる。

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