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青野賢一の新著が発売!YMOからBTSまで「音楽とファッション」を時代背景とともに迫る

Oct 1, 2022.三澤さくらTokyo,JP
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『音楽とファッション 6つの現代的視点』著者の青野賢一氏(撮影:セブツー)

リットーミュージックから今年7月に発行された著書『音楽とファッション 6つの現代的視点』が注目だ。著者は、2021年10月までセレクトショップ「ビームス(BEAMS)」でPRやクリエイティブディレクターを務め、現在は文筆家、選曲家として活躍する青野賢一氏だ。青野氏は、1990年代から「ビームス」のイメージ戦略を担ってきたひとりとして知られている。1968年に東京で生まれた青野氏は明治学院大学1年時に「ビームス」でアルバイトを始め、卒業と同時に同社に就職、1999年には設楽洋社長とともに「ビームスレコーズ(BEAMS RECORDS)」を立ち上げるなど、30年以上にわたって音楽とファッションの関係性を現場で見てきた。学生時代から愛好していた音楽方面で、「ビームス」での仕事と並行してDJ活動を行い、さらに音楽誌やファッション誌でコラムや音楽評を執筆するなど、「ビームス」がカルチャーに密接なセレクトショップであることを自ら率先して広めてきた。「ビームスに入っていなかったら、大学院に進んでいた」というように、刺激的で面白いことだけを追い求めるのではなく、研究者として、あるいは専門家としての視点で「ビームス」のイメージを舵取りしてきた。

青野氏の新著『音楽とファッション 6つの現代的視点』は、音楽史に名を残す偉大なアーティストから新進気鋭のアーティストまで、世界を舞台に多くの人々に影響を与えてきたアーティストたちを紹介している。しかし、キャッチーなミュージシャンを取り上げているのではなく、彼らの音楽性が時代や文化とどう結びついていったのかを6つの現代的視点から解き明かしていくという意欲的な1冊に仕上がっている。青野氏が30年以上にわたって見聞きしてきた「ファッション」と「音楽」という2つのキーワードを軸として、ポップカルチャーの裏に隠された時代背景を紐解き、アクチュアルな問題意識を提示している。青野氏は、本書の切り口について、「ファッションの側面だけでカルチャーを取り上げようとすると、どうしてもトレンドなど表層的な部分しか語ることができない。それに今の時代、カルチャーの歴史を並べるだけでは意味がないという考えは担当編集と一致していた。そうではなくカルチャーの根幹にある時代の空気や問題意識を持つべきだということを提示するために音楽とファッションというテーマで1冊をまとめた」と語る。学術書にもなり得るほど文献的価値がある内容だが、決して難解ではなく、学生時代はドラムを叩いていたという青野氏らしく、文章はとてもリズミカルだ。

本書は、「音楽表現とファッション性におけるジェンダー」や「差別との戦い」といった6つのテーマを題材に、レディー・ガガ(Lady GaGa)やボブ・マーリー(Bob Marley)、カート・コバーン(Kurt Cobain)、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)など総勢35名ほどのアーティストとデザイナー、さらには数本の映画の話などを交え解説している。「音楽が聞こえてくる本にしたかった」と言うように、ページを捲るたびにそれぞれの時代を彩った音楽が耳に響いてくるような気持ちになる。なかでも第3章で取り上げているYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)は、青野氏が音楽を好きになったきっかけでもあるアーティストで、詳しく解説している。YMOが世界で話題になった要因として、「西洋から見た誇張された東洋的なイメージを自らビジュアルに取り入れたことは大きい。さらに、受け手が想像力を働かせるような余白がそこにあったからだ」と指摘している。青野氏は小学生時代にYMOに魅了されて以来、文化全般をYMO経由で吸収したという。その後、何十年と続く音楽、ファッション、映画、美術への関心の端緒にはこのYMO体験がある。青野氏が「ビームス」でディレクションしてきたイメージ作りには、ひょっとするとこうしたYMO体験がベースにあったのかもしれないと思うと興味深い。

青野氏は、音楽とファッションがどのように繋がり派生してきたのか、関係性ごとに捉えようとする広い視点を持つことができれば、今抱えている社会問題すらも客観的に捉えることができるのかもしれないと説いている。「少し横を向けば違う世界が見えるはずだ。音楽とファッションはこんな風に社会と繋がっていることを多くの人にわかって欲しい」と語るように、音楽とファッションは今や膨大な量で日々生み出され、表層的なコンテンツとして消費されがちだが、新しいポップ・カルチャーを生み落とすために他者や他文化にもっと目を向けていくことが大切かもしれない。そんなことを気付かせてくれる1冊だ。

■『音楽とファッション 6つの現代的視点』概要
発行:リットーミュージック
著者:青野賢一
価格:2,640円

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