10月7日、アパレルブランド「アナップ(ANAP)」を展開するANAPホールディングスの株価が前日比+15.8%の733円でストップ高。これで5日連続の上昇だ。再建中のアパレル企業が、9月だけで約16億円を投じ、5回にわたりビットコインを購入した。業績は赤字が続き、第4四半期には約35億円の特損を計上する見通し。それでも株価は沸騰している。投資家が見ているのは「服」ではなく「仮想通貨」。もはや「暗号資産企業」としての顔が先に立っている。
■各社の構造を見比べてみよう
メタプラネットは「貯金替わり」にビットコインを保有。いわば「銀行よりもビットコインを信じる」という選択だ。だが、貯金はいつ出すのか。出せないなら、なぜ出せないのか。FTの取材によれば、経営トップは「ビットコインは売らない」と語ったという。必要な資金はビットコインを売らず、株式を発行して集める方針。いまや「持ち続ける勇気」がブランド価値を支えているんだ。
堀田丸正(11月11日にBitcoin Japanに社名変更予定)は、商社の血が流れる会社だ。繊維商社から暗号資産商社へ舵を切り、Bakktが筆頭株主に。海外の暗号資産企業と組み、ビットコインを自社資産として扱える体制を整えつつある。つまり「売る準備」ではなく「持ち続けても困らない仕組み」だ。
ではなぜ、どの会社も「現金化」を避けるのか。それは、ビットコインを売った瞬間に夢が終わるからだ。
理由は二つある。一つめは、ビットコインが「値上がりの象徴」そのものだから。会社が売れば「もう上がらない」と市場が感じ、ストーリーが消えてしまう。二つめは、保有そのものが株価の支えになっているから。売れば、会社はただの「普通の企業」に戻る。だから彼らは売らない。夢が続く限り、株価も動く。
そしてANAPは、「生きるためにビットコインを買う」異色の構図。含み益が出れば売る。損が出れば我慢する。つまり「現金化をいつするか」ではなく、「現金化せざるを得ない時が来る」。それが現実だ。
■三社の共通点は「夢を持つこと」
どの企業も、もうけより「保有宣言」で株価が動く。株主の夢を煽っているようでいて、実は経営側が自分たちの資産を増やすことに全力投球している。これはもはや、株式市場の「新しい物語ビジネス」と呼んでいい。
市場は今、喝采を送っている。企業が夢を語れば、投資家がそれを値段に変える。この空気こそ、2025年の株式市場のリアルだなー。
■買値と今の相場
メタプラネットは1BTC=約950万円で取得。堀田丸正は社名変更発表時、BTC=930万円前後。ANAPは平均1BTC=約910万円で購入とみられる。いずれも現時点(10月上旬、BTC=980万円前後)では含み益。ただし、為替とBTC価格の両方に左右されるため、明日には含み損になるリスクもある。
■じゃあ今、買っていいのか?
短期的な値動きは確かに魅力的だ。だがこれは、業績で上がる株ではなく「物語で動く株」。それはもはや、新しい企業を応援する「推し活」だ。巳之助も──正直、欲しくなるのはなぜか。それが株好きの心根と言いようがない。
だが、ここで巳之助は問いたい。ビットコインを持つだけで会社は回るのか?売らない会社は、どこで利益を生み、どうやって次の投資につなげるのか?企業は夢だけで動かない。利益を出し、コストを削り、再投資に回す──この循環が見えない企業はいずれ息切れする。そこはしっかり見ていこうよ。
サラリーマン株主が買うなら、少額で。我慢できなかったら、3社を一株ずつ買ってみたら(笑)?巳之助は「夢」と「現実」で少し迷うけど。
巳之助メーター 2ニョロ 監視
(1ニョロ=素通り 2ニョロ=監視 3ニョロ=今だ!)
サラリーマン株主は夢の行方を、静かに見届けよう。
プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。