
一般社団法人日本学生油絵会が主催する第75回「学展」が、新たな試みとして映像企画「他者を想像する四日間」を制作した。1950年の創設以来、若き芸術家たちの登竜門として歩み続けてきた「学展」。75周年という節目の年に迎えたこの企画は、芸術の本質を「他者への想像力」と捉え、次世代へとその精神を繋いでいくものだ。
映像では、俳優・髙橋一生と、学展出展者の中から選ばれた小・中学生7名が、4日間のワークショップを通じて共にひとつの作品を創り上げる過程が記録されている。髙橋一生は“導く者”ではなく、“伴走者”として子どもたちと向き合い、その心の動きに寄り添いながら、2枚の大きなキャンバスを完成させた。言葉では説明しきれない思いが、色と形となって表出する姿は、静かで確かな希望に満ちている。
映像監督は映画『チワワちゃん』や『真夜中乙女戦争』などで知られる二宮健。彼の視点によって紡がれた本作は、単なる記録ではなく、創作の根源に迫るドキュメンタリーとして仕上がっている。画面の中の子どもたちの眼差しや、筆を握る手元に映る“想像の種”が、観る者の想像力にもそっと火を灯すだろう。
完成した映像は、8月9日に国立新美術館・講堂にて関係者限定で特別上映される。さらに、子どもたちと髙橋一生が共に手掛けたキャンバス作品は、8月7日から17日まで同館の展示室で一般公開される予定だ。75年にわたって積み重ねられてきた「学展」の歴史と、未来を担う表現者たちの出会いが、この夏、新たな記憶として刻まれる。