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黒字転換のマクアケは、クラファンの泣き所「出来たらサヨウナラ」から脱却できるか【いづも巳之助の一株コラム】

NEWOct 30, 2025.いづも巳之助Tokyo, JP
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マクアケが2024年9月に開催したリアルイベント「OC TOKYO -推しコマース東京-」

クラウドファンディング最大手のひとつ、マクアケが2025年9月期決算を発表。売上高45億7700万円(+25.3%)、営業利益4億4700万円の黒字転換。黒字化の裏で見えてきたのは、クラファン業界が抱える構造的な「泣き所」だった。巳之助は率直にこう思う。「商品やサービスが出来たらサヨウナラ」の壁を越えられるかどうか?それがクラファンの高いハードルだよなあ、と。

◾️黒字転換はしたが、クラファンの構造は重い
クラウドファンディングは、一見すると手数料で安定収益を得られそうに見える。だが実際には、立ち上げ支援やプロモーション対応に手間がかかり、プラットフォームというより「開発アシスト」に近い構造を持つ。「CAMPFIRE」や「READYFOR」のような競合他社も、案件数を増やしても利益が出ない年が続いている。

その中で、マクアケの営業利益率は9.8%と、クラファン業界では異例の高さだ。ただしこれは「波がある」。案件の規模やジャンルに左右されるため、「平均的には一桁前半の時もあれば、今回のように跳ねる時もある」というのが実態だ。安定した利益構造には、まだ距離がある。

◾️クラファンの「出来たらサヨウナラ」構造
どのクラファン企業も抱えるのが、プロジェクト成功後の「その後」だ。商品が完成した瞬間、流通の主役は楽天やAmazonに移り、クラファン企業の出番は終わってしまう。商品が育つ頃には、クライアントは満足してスッと消える。クラファンの仕事は「誕生の瞬間」で終わるのが現状なんだよ。

◾️マクアケの対策は「インサイト」と「STORE」
マクアケが動き出したのは、その「出来たらサヨウナラ」をなくすためだ。新たに始めた「Makuakeインサイト」と「Makuake STORE(モール展開)」は、商品を「生む前」と「売った後」をつなぐ挑戦でもある。

「Makuakeインサイト」は、マクアケ上の膨大なデータを企業向けに解析し、「どんな商品が伸びるか」「支援者がどこで離脱するか」を見える化するサービス。「Makuake STORE」は、プロジェクト終了後に商品をECモールで販売代行する仕組みだ。これまで「途切れていた線をつなぎ直す試み」と言える。

そして現状、マクアケのプロジェクトはすべて「人力」で審査されている。キュレーターがプロジェクト文面や価格設計、法令遵守まで目を通す体制だ。その「人の目」の精度こそがブランド信頼を支えてきたが、一方でスケールを阻む要因でもある。ここにAIをどう組み込むかが次の成長テーマになるんだ。

◾️CAMPFIREとKickstarterの「壁」もまた同じ
日本最大手のひとつであるCAMPFIREは、個人中心で案件数は多いが、手数料率が低く、運営コストがかさむため、利益が出にくい構造だ。米国のKickstarterも、営業利益率は6〜7%前後にとどまる。AIで成功確率を分析する仕組みを導入しているものの、審査とサポートの多くを「人力」で行っており、スケールの「壁」を越えられていない。

マクアケはB2B型(企業支援型)に特化し、単価を高めることで高収益を確保してきた。だが本当の課題は「その後をどうつなぐか」だ。「インサイトとSTORE」がその答えになり得るか。2026年9月期は、その試みを形にする一年になる。

プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。

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