最近はヒップホップや未来的なクリエイションでミレニアルズに向けたコレクションに振ってい「たドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)」が、今季は自らのアーカイブを再編集した。「RE-EDTION」と題し、故郷シチリアをモチーフに刺繍やビジューをふんだんに使用したテーラリングが2023年バージョンになり、ダメージデニムは芳醇な大人の色気すら感じられた。他にもレース使いやフィッシュネットニット、端正なブラックスーツなど、このブランドを華やかに彩ってきたアイテムが続々登場。聖母マリアのプリントやデヴィッド・ベッカム(David Beckham)へのオマージュTシャツなど、キャッチーなモチーフも散見された。それぞれのアイテムには発表した年とss2023というタグが付いている。周年イベントではないが、コロナや社会情勢など、周囲によって心を悩ませる日々が続いているこのタイミングで、自らのクリエイションを紐解いたのには何か思うところがあったのかもしれない。しかし彼らが築き上げてきた数々のクリエイションに改めて圧倒させられたシーズンだった。
■軽快なリゾートコレクションの下では熾烈な生存競争が始まっている
バカンスムード満載だったのが「MSGM」だ。このブランドならではのプリント使いがトロピカルやウエスタン、スポーツなどで軽快に展開され、爽やかな夏を用意した。「エトロ(ETRO)」もリゾートファッションにブランドの根幹であるエキゾチックな要素を加えて発表。エトロは昨年LVMHグループ系列の投資会社 Lキャタルトン(L Catterton)に株式の60%を売却したことで創業者ファミリーがクリエイティブ・ディレクター職を退いた。メンズを担当していたキーン・エトロ(Kean Etro)によるコレクションはこれが最後となる。静かな幕引きに一抹の寂しさを覚えた。来季からはマルコ・デ・ヴィンチェンツォ(Marco De Vincenzo)がウィメンズ、メンズ、ホームコレクションのクリエイティブ・ディレクターに就任。2009年に自身のブランドを立ち上げた中堅だ。ミラノでは実力派と認められての起用だが、日本ではほとんど知られていない。こうしたデザイナーが多いのもミラノの特徴だ。
例えば、日本のメディアでも取り上げられているところでは「マルセロ・ブロンカウンティ・オブ・ミラン(Marcelo Burlon County Of Milan)」はミラノのストリート系の代表だ。「サイモン・クラッカー(SIMON CRACKER)」はすでに2010年にはデビューしている中堅ブランドだ。「フェデリコ・チーナ(Federico Cina)」は2019年デビューとまだ若いこともあり、テーラリングのエレガントなシーズンもあれば、華やかな色合いやコンフォタブルなニットがメインのシーズンがあったり、方向性が定まっていない。
ここに、外国勢が加わってくる。「1017アリックス9SM」はジバンシィ(Givenchy)のクリエイティブディレクターのマシュー M ウイリアムズ(Matthew M Williams)のブランドだ。ロンドンからは「JWアンダーソン(JW Anderson))や「チャールズ・ジェフリー・ラバーボーイ(Charles Jeffrey Loverboy))、「ジョーダン・ルカ(Jordan Luca))、ベルリン発の「44レーベル・グループ(44 label group))、インド出身の「ドゥルーフ・カプール(Dhruv Kapoor)」、日本の「チルドレン・オブ・ザ・ディスコーダンス(Children of the discordance)」など、ここに紹介したブランドはごく一部だが、新人、中堅どころが混在しているのがミラノだ。
よく言えば層が厚いのだが、もしかするとパリよりも熾烈な生存競争が繰り広げられているのかもしれない。