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「化粧品サンプルは、無料の美容塾」皮膚科医・横井彩先生の彩肌通信第9回

NEWSep 16, 2025.横井彩Tokyo, JP
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東京・日本橋にある「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」の院長、横井彩です。「皮膚科医・横井彩先生の彩肌通信」を通じて、皮膚科の専門医としてみなさんの日常に彩りを足す情報を発信していきたいと思います。

さて、「無理せずキレイを楽しむ」をテーマに連載している「彩肌通信」ですが、今回のテーマは「化粧品サンプル」について。みなさん、化粧品サンプルをもらうことってありますよね。百貨店やドラッグストアでの買い物の際に渡されたり、イベントや展示会で関連メーカーの試供品をもらったり。しかし「旅行や出張で使おう」とか「良さそうな美容液だから特別な日の前に使ってみよう」などと、つい引き出しやポーチの中に眠らせてしまうことってないでしょうか。私も以前は、「旅行用ストック」として溜め込んだままとなり、いつもらったかも分からない古いサンプルが出てきて、使うことに不安になり捨ててしまったという苦い経験があります。似たような経験がある方もいるのではないでしょうか。

私は仕事柄、化粧品サンプルをいただく機会はとても多いです。学会や勉強会に出席すると、医療機関用化粧品いわゆるドクターズコスメの新製品のサンプルをもらいます。またコスメ好きなので、よくコスメカウンターで化粧品を買った際に一緒にそのブランドの新製品のサンプルをもらって2倍嬉しい気持ちになって帰ることもよくあります。

そんな嬉しい気持ちでもらったはずなのに、「いつか使おう」と一旦しまいこんだ結果、製品の特徴や何がウリなのかを忘れてしまうことも過去にはありました。自分の中でのその化粧品の“旬”が過ぎてしまったことに、とても勿体無い気持ちになりました。そんな経験を経て、今の私は、もらった化粧品サンプルはしまいこまず、できるだけ「すぐに使う」を意識しています。化粧品サンプルの本来の役割は、自分の肌に合うかどうかを試すこと。試したいという気持ち、つまり自分の中の“旬”を逃してしまっては化粧品に申し訳ない。「良さそう!」という新鮮な気持ちが消えないうちに試すことにしています。

もちろん、旅先でサンプルをうまく活用できるならば問題ありません。けれども出張や旅行が頻繁にあるわけではない以上、実際には眠らせてしまう人が多いでしょう。また他にも、サンプルの旅先での使用をお勧めしない理由があります。環境や手持ちのコスメの数が少ない旅先で慣れない製品を使うことには少しリスクがあります。まずスキンケア製品のサンプルの場合。旅行では肌が疲れ気味だったりホテルの部屋が乾燥したりしています。この状況で慣れないスキンケアを使って肌の調子が下がったらガッカリですよね。普段と違う環境だからこそ、スキンケアは安心できるものがお勧めです。

また、日焼け止めや下地などのベースメイクの場合。旅先では洗面台の照明など使用する環境が普段と異なります。ちゃんと仕上げたつもりで外に出て見たら、白浮きした自分の肌に驚愕!という経験はありませんか?私はあります。このような失敗を経て現在の私は、旅には普段から使っている化粧品をミニボトルに詰め替えたり、使い勝手がわかっている製品のミニサイズを持参するのが習慣になりました。メイクアイテムも手持ちの中でよりコンパクトで軽量な製品から組み合わせを考える、それに合わせたポーチやミニボトルを選ぶ、こういったことも旅の楽しみとなりました。『合わなかった時のため』と余分な化粧品を持っていくことがなくなり、結果荷物がコンパクトになりました。何より肌状態や肌の仕上がりに安心感があることは、旅行中の気分を大きく左右します。

化粧品サンプルをもらったら、いつか使おうと後に延ばさず、どんどん使っていきましょう。そしてただサンプルを使うのではなく、より積極的に「化粧品に対する目を育てる」つもりで使ってみてください。買おうか迷っている商品や、話題の新作サンプルをもらうと嬉しいですよね。その嬉しい気持ちがあるうちに、次の休日にでも使ってみましょう。化粧品はつけた時の使用感や仕上がりだけでなく、時間が経ってからの変化に個性や自分の肌との相性が出ます。朝は良いと思っても「昼に乾燥を感じる」「夕方には毛穴落ちしている」こともあるし、「夜まで透明感が続く」といった違いがあります。そういう経験を繰り返すうちに少しずつ自分の肌との相性がわかってきて、「これは苦手系」とか「自分に合いそう!」など見極めやすくなってきます。

私は、週末にいくつかのサンプルを試すようにしています。休日に丸一日かけてじっくりと「ガチ評価」をするわけです。一度使うだけでも、肌との相性やファンデーションのノリは十分に判断できます。真剣に買うつもりだった製品が、使ってみると「好みじゃない」とがっかりすることもありますが、それも経験のうち。逆にそこまで注目していなかったけど「これアリかも」と思える出会いもあります。芸術や音楽鑑賞が数を重ねていくほど目や耳が肥えていくように、化粧品もまた「見る目」を養っていく楽しさがあります。

特にスキンケアアイテムについては、私は抵抗なく新しいものを試します。敏感肌の方には慎重さが必要ですが、サンプルだからこそ挑戦しやすい側面もあると思います。1日単位で「肌が柔らかくなった」「香りでリラックスできた」といった変化を感じ取れるのは楽しいものです。自分の肌と真剣に向き合う時間は、セルフケアそのものでもあります。

改めて考えてみると、化粧品サンプルはとてもポジティブな存在だと思います。無料で、肌に新しい発見をもたらしてくれる小さなギフト。ただ旅先で消費するのも、ましてや放置してしまうなんて、本当にもったいないことです。もらった時のテンションが残っているうちに早めに試してみることが、心にも肌にも良い効果をもたらしてくれるはずです。

みなさんもぜひ、引き出しに眠っているサンプルを今週末にでも取り出してみてください。新しいお気に入りとの出会いが、意外なところに隠れているかもしれません。

さて、今回の「彩肌通信」はいかがでしたでしょうか。今後も『彩肌通信』では、皮膚科医ならではの視点で、無理なくキレイを楽しむヒントをお届けしていきます。

*「セブツー」では、横井彩先生へのお肌の悩みや相談を受け付けています。お問い合わせはこちらまでお気軽にご連絡ください。
email:info@minimal.jp

■横井彩 プロフィール
「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」院長。皮膚科専門医、医学博士。2003年に秋田大学医学部を卒業した後、同大学皮膚科で研鑽。2017年藤田医科大学アレルギー科にて講師。2021年に「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」を開院。日本美容皮膚科学会や日本香粧品学会などに所属。

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