資生堂は12月21日、中国のテクノロジー大手のテンセントと3年間のグローバル戦略的パートナーシップを締結したと発表した。テンセントは、2008年に投資会社を設立すると、インターネット関連の投資を軸に大きな成果を上げてきた。中国IT企業の中でも圧倒的な投資力をみせ、2021年第3四半期の投資利益は上場企業への投資だけで約1,200億元(約2兆1,400億円)*となっている。
テンセントは、約13億人の月間アクティブユーザーを抱えるインスタントメッセンジャーアプリのWeChatの運営など、D2Cプラットフォームや顧客エンゲージメントに優れたノウハウを所有する。このパートナーシップ締結により、資生堂はD2Cモデルの構築と、SNSとEコマースを掛け合わせて商品の販売促進を行うソーシャルコマースを強化し、世界中の中国人消費者に新たなサービスを提供していくこととなる。また、この提携によって得たノウハウを資生堂グループ全体で活用し、DXの加速とデジタル能力開発の強化による、グローバルでの成長も見込まれている。
資生堂の中国市場は、新型コロナウイルス感染症の変異株の拡大などもあり、オフラインの店舗は一部閉鎖するなどの苦境が続く反面、Eコマースといったオンラインではスキンケアを中心に成長を続けている。また欧米市場を見ても、アジアパシフィック、トラベルリテール、米州、欧州全てでEコマースは成長している。2023年までには、米州、アジアパシフィック、欧州の3地域全てでDXを加速する「FOCUSプラットフォーム」を展開予定だ。このプラットフォームは、グローバルのビジネス分析強化において、データの標準化や業務プロセスの最適化に関して力を発揮すると考えられている。
資生堂は、「ベアミネラル(bareMinerals)」「バクサム(BUXOM)」「ローラ メルシエ(Laura Mercier)」といったブランドの事業譲渡により取得した資金で、最重要ブランドの育成やDXの推進、イノベーションの強化に向けた投資などを行なっている。2021年第3四半期決算の説明の中には、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティカンパニーへ」という言葉が使用されたが、今後どのようにして世界の厳しい競争環境の中で勝っていくのか。その戦略に注目していきたい。
*1中国人民元=17.83円(12月21日時点)