スエード調人工皮革素材「アルカンターラ(Alcantara)」は、メイド・イン・イタリーの最高品質を誇るマテリアルブランドに成長した。そもそもは1972年に東レとイタリアのEni社の合弁で設立されたが、イタリア製をアルカンターラ、日本製をウルトラスエードとしてそれぞれ独自の路線を歩んでいる。「アルカンターラ」の最大用途は自動車、特に高級車の内装だが、アパレル用途でも拡大を続けている。
最近はデザイナー、ブランドとのコラボレーションを多く行っている。特に日本の「Y’s(ワイズ)」とのコラボでは2014年3月、2019年6月と東京でファッションショーを行って好調を博している。
今回のコラボでは、日本の「ファセッタズム(FACETASM、デザイナー 落合宏理)」と「フミエタナカ(FUMIE TANAKA、デザイナー 田中文江)」の2ブランドが選ばれた。「ファセッタズム」では、パリ・メンズ・ファッション・ウィーク中の1月19日に行われた2023-24年秋冬ランウェイショーで10体のルックに「アルカンターラ」が使われた。バイオレット、オレンジ、ルビーレッド、ベビーグレーなどのカラフルな「アルカンターラ」にレーザーカットによる加工が施されたレースやフリンジが注目された。
一方、東京ファッション・ウィークの3月21日に行われた「フミエタナカ」の2023-24年秋冬ランウェイショーでは6体のルックだけでなくバッグ・ポシェットにも「アルカンターラ」が採用された。デジタルプリントで再現された花柄のパターンや結び目状にハンドメイド加工されたフリルなどが注目された。両ブランドとも「アルカンターラ」のこうしたデザインへの対応力の高さを証明することになった。
デザイナーの落合宏理は、「技術やサステナビリティへの取り組みなど、メイド・イン・イタリーで高い評価を得ているアルカンターラ社とのコラボレーションにより、我々のクリエーションに新しい側面を与えてくれた。日本の刺繍工場で加工した花柄の切り抜きやフリンジ加工など、アルカンターラのマテリアルだから出来る表現をファセッタズムらしいデザインに落とし込んだ」と語り、ザイナーの田中文江は「アルカンターラの耐久性や軽量性を最大限に活かした。またトラベルにも使えるバッグはマテリアルの特性に合った理想のアイテム」と語った。
今回のコラボを記念し、3月28日には東京のイタリア大使館公邸でプレスレセプションパーティーが開催された。上記作品のうちメンズ3体、ウィメンズ3体の計6体が展示され、ジャンルイジ・ベネデッティ(Gianluigi Benedetti)駐日イタリア大使、来日したアルカンターラのアンドレア・ボラーニョ(Andrea Boragno)CEO兼会長、前述の2人のデザイナー落合宏理、田中文江の他、今回のプロジェクトに立ち上げから携わったスタイリストの祐真朋樹も登場し、招待された約120人のマスコミ関係者と今回のコラボの成功を祝った。