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海外2社の買収でアシックス株が急伸 ランナーの登録データの一元化を世界規模で進めるアシックスのグローバル戦略

NEWNov 20, 2025.高村 学Tokyo, JP
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アシックスの株価が11月20日、買いを集めて上昇している。11時時点で前日比127円高の3%超となる3,725円をつけ、市場では同社の成長戦略に対する期待感が高まっている。

きっかけとなったのは、同日発表されたランニング関連プラットフォーム企業の相次ぐ買収だ。同社はスペインでレース登録サイト「デポチケット(Deporticket)」を運営するDPTK INNOVACION TECHNOLOGIAと、タイのランニングイベント登録サイト「タイ・ラン(THAI RUN)」を手がけるThaidotrunの買収を発表した。いずれも現地で主要なランナー向けプラットフォームとして知られており、アシックスが各国のランニングイベントおよびランナーとの接点を直接押さえる狙いがあるとみられる。

アシックスはランニング事業をグローバル成長の柱に据えており、エコシステム化に力を入れている。単にシューズやアパレルを販売するだけでなく、ランナーが参加する大会、データ管理、トレーニング支援、コミュニティづくりまでを一体で提供する構想だ。こうした戦略を背景に、ブランドを取り巻くデジタル領域の買収を継続してきた。

実際、同社は2022年11月にも欧州最大級のレース登録サイト「ニューコ(njuko)」の運営会社を約20億円で買収している。「ニューコ」はフランスをはじめ、イギリス、イタリア、ドイツなど欧州主要国でサービスを展開し、年間を通じて多くのランナーが利用するプラットフォームだ。アシックスはすでに日本やオーストラリアのレース登録サイトも傘下に収めており、今回のスペイン・タイの買収により、グローバルでのネットワーク拡大がさらに加速することになる。

こうしたグローバル戦略にもとづいて、ランナーが大会にエントリーし、準備を進め、レースに参加し、記録を管理する一連のプロセスをサービス上で完結できるようにすることで、アシックスはユーザーの囲い込みとブランドロイヤルティの強化を狙える。さらに、ランナーの走行データ、イベント参加履歴、地域ごとのトレンドなどが蓄積されることで、商品開発やマーケティングの高度化につながる可能性がある。

ランニング市場はコロナ禍で大きく伸び、アフターコロナでも堅調な動きを見せている。アシックスのランニングシューズは海外で高評価を受け、同社の業績を押し上げる主力カテゴリーとなっている。こうした中で、ランニングイベントの入口であるレース登録サイトを戦略的に取り込むことは、事業の継続的な成長に寄与すると期待されている。

株価が上昇した背景には、単なる買収ニュース以上に、アシックスが描く中長期の成長戦略への信頼感がある。世界のランナーとの接点を広げ、データとテクノロジーを活用したサービス提供を強化する同社の姿勢は、スポーツブランドの新たな競争のステージへ向かう動きとして注目されている。

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