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中国が大幅減便と渡航自粛 百貨店業界を直撃する地政学リスクと訪日客頼みの限界

NEWNov 26, 2025.セブツー編集部Tokyo, JP
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日本百貨店協会は11月25日、全国の百貨店70社・176店舗の10月売上高を発表した。全体売上高は4668億円となり、前年同月比4.3%増。7月から続く前年超えで、これで3カ月連続のプラスとなった。特に免税売上が回復傾向にあり、売上高は同7.5%増の546億円と、8カ月ぶりにプラスへ転じた。

10月は中国の大型連休「国慶節」があり、購買客数も同8.9%増の56万4000人と大幅に伸長、売上高・購買客数ともに10月としては過去最高の記録となった。

一方で、免税売上は9月まで7カ月連続で前年割れが続いており、本格回復とはまだ言い難い。ようやくプラスへ反転したものの、今後の見通しには不透明感が漂う。その最大の要因が、11月以降表面化しつつある「台湾有事」をめぐる地政学リスクだ。

中国政府は日本との関係が緊張する中、経済的威圧とも受け取れる政策を強化しており、中国国民に対して日本への渡航を控えるよう呼びかけている。また、中国政府は中国国内の航空会社に対し、2026年3月末まで日本路線の運航便数を削減するよう指示したという。これが事実であれば、航空便の供給制限は長期間にわたる可能性があり、訪日客数の伸びにブレーキがかかることは避けられない。

特に影響が大きいのは、来年の春節(旧正月)シーズンだ。例年、春節の訪日客は百貨店にとって最大規模の需要喚起イベントであり、高級ブランドや化粧品売場を中心に大きな売上を生む。もし航空便減便が長期化すれば、百貨店にとって痛手となることは間違いない。

しかし、百貨店業界はここ数年、インバウンド依存からの脱却をテーマのひとつとして掲げてきた。百貨店各社はイベント強化やブランド誘致、外商顧客の拡大など、自立的な成長モデルの構築に力を入れている。高級時計やハイジュエリーの販売は依然として堅調で、円安を追い風に国内富裕層の購買意欲が高まっている点も業界を支える。

中国リスクが浮上した今、免税売上が今後揺れる可能性は高いが、一方で百貨店が本質的な成長戦略を問われるタイミングでもある。外部環境が不安定だからこそ、インバウンドに依存しない、そして地政学リスクに振り回されないビジネスモデルをどれだけ磨けるかが、業界全体の底力となる。

百貨店は「訪日客頼み」の時代から、再び国内需要と独自価値で勝負する局面へ移りつつある。今回の10月実績は、その可能性を示唆する一つのシグナルといえるだろう。

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