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インバウンド減速ではなく、百貨店株にブレーキがかかる本当の理由【いづも巳之助の一株コラム】

NEWJul 28, 2025.いづも巳之助Tokyo,JP
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今、百貨店株価になぜブレーキがかかっているか?

一般的な回答としては「そりゃ簡単だよ、インバウンドの顧客が来なくなり、為替で儲けていたハイエンド・ブランドが次々値上げして売れなくなり、ついでに国内外商客も買わなくなったからだ」。なかなかご名答です。つまり、コロナ以降V字ターンした理由は「外商の再強化」「ハイエンド・ブランドを中心に戦う」「インバウンド客が自然に増加」の3要素だったが、最近全てにブレーキがかかったからだ。そして最も重要な「次の10年間戦えるビジネスモデル」が見えないため、アナリストの指摘通りに各社は配当を上げたり、自社株買いをしたりして、株主還元を一生懸命やっているのが現状だ。

100年以上続いている百貨店は、過去数回ビジネスモデルを変えていった歴史がある。「建築自体で評判を得た時代」「催事場であらゆる物産展、外国展を開催し、シャワー効果のあった時代」「美術館や映画館を併設し、文化を提供した時代」「ハイエンド・ブランドを揃え、化粧品や食品もブティック化した時代」どれも時代の先取りだ。今行っている「過去の焼き直し施策」とは違う。各社声高に説明している「カードやアプリで顧客のデータを生かして商売している」のは、もはやブランドでもメーカーどこでもやっているし、新しいことではなくなった。

最近、巳之助は数多くの美術館に通っている。とにかく面白いんだ。国宝や重文を見せるだけでなく、それらを歴史上でつなげてみて、「次の時代はこうなるかも?」としっかり問題提起とキュレーションがなされていて、その美術館に行かないと「絶対出ない味」があるんだよ。知的な快楽ここにありだ。お堅い「トーハク」でさえ、まるで変わった。

それに気づいたとき巳之助はハッとしたね。今、百貨店に足りないのはやっぱりこれだと。チョコレートやスニーカーや化粧品をただ漫然と並べて、1点1点を売ろうとするからつまらないんだな。お客様によってサービスを区別するCRMを取り入れ始めた百貨店が全盛の中、やはり暖簾に「独特の価値や評判を発信」していかないと、「この百貨店の外商の顧客になりたい!」なんてやがて思ってももらえなくなるよ。

それに最近は「宣伝費や研究費に大ナタを入れて、コストカットしました、アナリストの皆さーん、ホメてください!」を百貨店全社横一線でやっている。実はカットしちゃいけない経費をカットしてるんじゃないかな。だって、どの百貨店も今、全然面白くないもん。コストを削って、感動がなくなるのは、百貨店にとって致命傷だよ。各百貨店、宣伝費なんて、もはや純粋に使えるのは1%もないはずだ。個性なんて出やしない。

高額品は、外商サロンで気分よく買えるのはいいけど、伊勢丹でも髙島屋でも阪急でも「環境が良くて、歓待してくれる」のであればどの店でもいいはずだ。でも、なぜ選んでいるかは、自己満足や人に自慢したいというのもかなり重要な要素だね。結局、それが各百貨店の価値や評判から生み出されることを忘れてるんじゃないかな。ただの物販の場所じゃないよ。財務健全性だけキープしようとすると鋭いものは出てこないね。

マス媒体を増やせと言っているのではなく、コア層から火がつくような強いコンテンツを増やして欲しいんだ。時代に先駆けて仕掛けないと、日本の百貨店伝統の「時代の先取り」が泣くね。CRMやDXは大事だが、「日本初、世界初を生み出すビジネスモデル」があってこそ価値が上がり、評判が上がり、世間でブームを作る。そうなれば百貨店の株は長期保有され、株価は騰がっていくだろう。

▶巳之助メーター 1ニョロ 今は素通り。つまらない。       
日本初、世界初を意識したコンテンツやビジネスモデルが登場してきたら、応援しますよ!
(1ニョロ=素通り 2ニョロ=監視 3ニョロ=今だ!)

■プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。

 

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