
「ニコアンド(niko and …)」などを展開するアンドエスティHD(旧アダストリア)は9月30日、米ファストファッションブランド「フォーエバー21(FOREVER21)」の日本事業を2026年2月までに終了することが明らかになった。日本撤退が明らかになる前からすでに国内店舗の縮小が進んでおり、新宿「ルミネエスト新宿店」は9月7日、横浜「相鉄ジョイナス店」は9月15日で閉店。10月17日にはオンラインストアもクローズし、国内で営業を続けていた全店舗が姿を消す。
日本撤退が明らかになった翌日には株式市場も反応。アンドエスティHDの株価は前日終値2,998円に対し、発表翌日の11時までに250円安の約2,748円となり、8%超まで下落している。
「フォーエバー21」は1984年、韓国出身のドン・チャン夫妻が米ロサンゼルスで創業したブランド。低価格ながらトレンド感のあるアイテムで人気を集め、最盛期には世界800店舗以上を展開。日本には1990年代に三愛グループと組んで進出したが撤退。その後、合同会社FOREVER21 JAPANが2009年春に日本再上陸を果たし、原宿の1号店はオープン当初から長蛇の列を生む人気ぶりだった。当時は前年に上陸した「H&M」とともに、ファストファッションブームを牽引した存在だ。
しかし、国内ではその後「H&M」「ザラ(ZARA)」など海外勢との競争が激化。さらに「ユニクロ(UNIQLO)」や「ジーユー(GU)」といった日本勢も台頭し、同社の立ち位置は次第に低下。2019年10月末には日本市場から再撤退していた。
再び日本市場に姿を現したのは2023年2月。日本では、伊藤忠商事がマスターライセンス権と販売権を保有しており、アダストリア(現アンドエスティHD)の子会社であるゲートウィンがサブライセンス契約を締結、国内展開を担い、3度目の上陸を果たしていた。「フォーエバー21」のクリエイティブディレクターには、「ヒース(HEATH)」の野田源太郎を起用していた。
背景には、若年層を中心にファストファッション市場の構造が大きく変化していることがある。低価格競争だけでなく、サステナビリティやブランドストーリー、D2Cブランドの台頭など、消費者の選択基準が多様化。SNS発の小規模ブランドや古着市場も勢いを増し、かつてのような大量出店モデルが通用しにくくなっている。かつて日本のファストファッション旋風を巻き起こした「フォーエバー21」の3度目の撤退は、国内アパレル市場の転換点を象徴する出来事となりそうだ。