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再々上陸の「フォーエバー21」は「再上陸ブランドに成功例なし」のジンクスを覆せるか?

Sep 24, 2022.三浦彰Tokyo, JP
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アダストリアの木村治社長

「フォーエバー21(FOREVER21)」が日本に再々上陸するという。余計なことかもしれないが、今回の「フォーエバー21」は正確には再上陸ではない。再々上陸である。元気だった頃の鈴屋だったかその子会社が1990年代に日本で取り扱いを行っていた。その後、合同会社FOREVER21 JAPANが2009年春に日本再上陸し、2019年10月末に日本再撤退していたのだ。

今回はアダストリアの子会社ゲートウィンが運営会社になって、日本でのオリジナル企画の商品80%、仕入れ商品20%という構成になる予定だという。ターゲットは10代前半から30代前半と以前よりも幅を広げ、平均商品単価は4000円、客単価は5800円というのだから、これはもうファストファッションではない。欲しかったのは、「フォーエバー21」というブランド知名度だったということになる。米国では、チャプターイレブン(連邦破産法第11条、日本の民事再生法のようなもの)を申請した「キズモノ」がそんなに欲しいのだろうか。

このプロジェクトを仕掛けたのは、伊藤忠商事だろう。倒産したフォーエバー21を米国において安値で買ったブランド管理会社ABG(オーセンティックブランズグループ)と結託している。ABGはこの他にも、「バーニーズ・ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」「ブルックスブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」「エディー・バウアー(EDDIE BAUER)」「リーボック(REEBOK)」など倒産や経営難に陥った有名ブランドを次々に傘下に収めている。無礼を顧みずに言えば、ブランドの廃品回収業である。「昔の名前で出ています」という歌があったがそんな感じである。もちろん、そういうブランドを欲しがる企業があるから、ABGはそうしたブランドを安値で買い漁るのだ。そういう傘下ブランドは50を超えるというから驚く。このABGと結託して日本企業にこの「昔の名前で出ています」ブランドを斡旋しているのが伊藤忠商事である。最近は2021年に日本撤退したばかりのABG傘下の「エディー・バウアー」を岐阜の水甚(みずじん)というアパレルメーカーにライセンス生産させるという契約を結んだばかりだ。直輸入方式よりもライセンス生産させてロイヤリティーを稼いだ方が安全に儲かるということなのだろう。今回のアダストリアの子会社のゲートウィンも、仕入れ商品20%、ライセンス生産80%という計画である。ローカライズで日本人にフィットした商品がメインと言えば聞こえはいいが、「フォーエバー21」という「昔の名前」に頼ったブランドがそんな簡単に成功するものなのか。

ファストファッションはグローバルなサプライチェーンを構築して、量産効果を出してこそ利益が出るというのが本筋である。「フォエバー21」はファストファッションとしては「ザラ(ZARA)」「H&M」「GU(ジーユー)」という競合ブランドにメッタ打ちにされて、日本撤退していたブランドだ。では、脱ファストファッションで名前だけ借りてライセンス生産するというのだが、どうなのだろう。

アダストリアはライフスタイル提案型ショップブランド「ニコアンド(niko and ...)」や1400万人の会員を有する自社ECサイト「ドットエスティ(.st)」を構築するなど最近は、日本人のファッションシーンをリードする存在になったが、この「フォーエバー21」プロジェクトは好調な同社が手掛けるようなビジネスなのだろうか。

そして、このブランドのクリエイティブディレクターはなんと野田源太郎氏だと知って驚いた。あの東京コレクションに「イリアド(ILIAD)」でデビューし、「イリアド」がブランド商標の問題で使用できないということで、「ヒース(HEATH)」にブランド名を変え、ミニマルで哀愁溢れるスタイルで人気だったデザイナーである。現在はアダストリアブランドの全体のクリエイティブディレクターを務めているという。出世したものだ。野田氏は今回のプロジェクトで「ファッションをやりきることが成功につながる」と言い切っているという。抽象的でわかりづらい発言だが、この時代で「ファッション」を標榜するとは、さすがに元東コレデザイナーである。

私の持論は、「再上陸ブランドに成功例なし」だ。40年間、日本のファッション業界を見て来た結論だ。さて再々上陸になった今回の「フォーエバー21」だが、このジンクスを覆すことはできるのだろうか。その成功を期待したい。

 

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