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銀座ロレックス強盗事件にみる「犯罪の産業化」

May 9, 2023.三浦彰Tokyo,JP
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事件翌日のロレックス専門店には多くの報道陣が詰めかけた(撮影:セブツー)

物騒な世の中になっている。振り込め詐欺(旧称オレオレ詐欺)は巨大な「犯罪産業」になっているし、衝動的な暴力事件は頻発しているし、「トー横キッズ」に代表される未成年の売春も組織化している。従来は反社会的集団(ヤクザ)がこうした犯罪を仕切っていたわけだが、「犯罪の産業化」で、そうしたプロではない新しい悪の担い手たちが誕生している気配がある。

そうした中で、連休明けの5月8日午後6時頃、銀座中央通りのロレックス専門店で発生した5人組による強盗事件は衝撃的だった。従業員に刃物を突き付け「伏せろ、殺すぞ」などと脅し、バールでショーケースを叩き割って高級時計「ロレックス(ROLEX)」をバッグに詰め、車で逃走した。少なくとも100点以上、1億円相当が奪われたと見られている。その後、警視庁は逃げた男らの行方を追ったが、港区赤坂の路上で犯行車両を発見し、同日午後11時頃、近くの建物に侵入していた男4人の身柄を確保。もう1人の行方を追っている。男4人は、16歳の無職、18歳の高校生、19歳の職不詳、19歳のアルバイトで、いずれも横浜市に住んでいるという(以上の犯罪情報についてはTBS NEWS DIGを参照した)。

16歳〜19歳が人気絶大な高級時計の王者とも言うべき「ロレックス」を狙ったというのに驚く。腕時計だからカサにならないし、また人気ブランドだけに現金化も容易であるし、犯罪としてはよく考えられている。16〜19歳がこのあたりの事情を知っていたのだろうか。その背後にこの5人を教唆した人物がいるのではないかと考えるのが自然だろう。盗まれた商品は回収されていないというから、この若者たちは「パシリ」である可能性は高い。まさに「犯罪の産業化」の見本のような事件ではないか。

襲撃された店舗は、株式会社アール QAURK SALON OSAKAが運営する「クォーク」だ。本社所在地は東京都台東区上野6−3−1だ。1998年創業のロレックス専門店でアンティークはもちろん、「新品、中古品を取り扱う世界で唯一のロレックス専門店」を自称している。日本に16店舗、香港に店舗(2023年1月現在)を展開すると同時に世界20カ国以上に時計ブローカーとのネットワークを有し、香港子会社を通じたホールセールも行っている。もちろん「ロレックス」の日本法人の日本ロレックスとは無関係だが、「ロレックス」ビジネスを手広く行っているようだ。

周知のように日本ロレックスには直営店がなくて、銀座日新堂、株式会社ホッタ、栄光ホールディングス株式会社(グロリアス株式会社)、株式会社東邦(株式会社フタバ)、有限会社福田という5つの大手特約店を中心にした「正規店」によって日本ロレックスを経由した正規品を販売するという流通システムが長らく続けられている。

特約店ではないアールのような「ロレックス専門店」はかなりの数に上っており、日本ロレックスがそれをコントロールしているわけではなく、今回の事件でその流通の特殊性が図らずも明るみに出たということができるかもしれない。ファッション&レザー分野のラグジュアリーブランドでこうしたブランド専門店が成立しているのは「エルメス(HERMES)」ぐらいではないだろうか。

それはともかく、高級宝飾や高級時計の路面店では、今後こうした強盗が多発し、盗品は回収できないというようなケースが多くなるのが予想される。つくづく物騒な世の中になったものである。

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