「LINEギフト」のコアユーザーは20~30代の女性で、ビューティーカテゴリーではそのユーザー層に刺さるジャンルの商品を展開している。ここに相性の良さがあり、ビューティーカテゴリーが支持される1つの理由になっている。「LINEギフト」はそもそも、贈る相手の住所が分からなくても、ギフトを贈ることができる。直接会わなくてもギフトを贈れることから、タイパにも優れている。誕生日を公開しているユーザーであれば、友だちに誕生日の通知が届くので、ギフトを贈るきっかけ作りにもなる。
他にも、百貨店のコスメフロアにあるようなラグジュアリーブランドから、韓国コスメといったトレンドの商品まで幅広いブランドが公式ショップとして出店している点も支持されている要因で、ギフトの選択肢が増えることで、贈りたいシーンに合ったものを見つけやすくなり、購入する機会が増えていると赤木広美氏は分析している。また、ビューティーカテゴリーでは、「LINEギフト」でしか手に入らない誕生日向けの限定セットを積極的に取り揃えているため、「LINEギフト」ならではの有意性のある商品展開もカテゴリーの成長を牽引しているのだろう。誕生日はシーズンを問わないため、需要時期に偏りがなく、安定的に需要が見込める。
ギフトを贈る際のちょっとした手間を省く
入浴剤やハンドクリームなど幅広い層に贈りやすい商品がビューティーカテゴリー内で定番かつ人気の商品だが、「ギフトを受け取った相手が色や香りを選べる機能」は今年の5月から始まったサービスで、もっと売り上げにつながった機能だ。ほとんどのコスメには色や香りのバリエーションがあって、相手の好みが分からない、もしくはもうすでに持っているかもしれないという不安からユーザーは無難な商品を選びがちだった。しかし、この機能を付与することで、ユーザーはバリエーションが豊富なコスメや香水も購入しやすくなったという。注文した後に色や香りを選べるというサービスは一般的に店頭では提供しづらく、この機能を付与した商品がビューティーカテゴリー内の売り上げトップ10の中でも半数を占めている。また、この機能によって、贈る側が店舗に行く必要がなく、コスメに疎くても相手が自分の好きな色や香りを選ぶことができるため、男性も女性にビューティーアイテムを贈りやすくなった。「ギフトを受け取った相手が色や香りを選べる機能」の付与以降は、カラーリップなどが活発に売れている。
一方で、売れ筋の商品が即完売してしまうと機会損失も発生してしまう。また、「ギフトを受け取った相手が色や香りを選べる機能」でもともと5色の中から選択できたとしても、人気カラーが完売し残り1色しかないとなると、結局選択の自由が阻まれ、機能自体の意味がなくなる。こういった事態を防ぎ、ユーザーに良いギフト体験をしてもらうために、日々の欠品チェックも心掛けている。
LINEギフトならではの商品展開を目指す
ビューティーの需要が見込まれる11~12月に向けて、「トム フォード ビューティー(TOM FORD BEAUTY)」、「ローラ メルシエ(LAURA MERCIER)」、「バウム(BAUM)」、「シセイドウ メン(SHISEIDO MEN)」などが新規に出店し、「ジバンシイ ビューティー(GIVENCHY BEAUTY)」、「ラ・メール(La Mer)」は期間限定でポップアップを出店した。ビューティーカテゴリーを開始した3年前に比べて、高額な商品も展開するようになり、ブランドの取引数自体も増加している。赤木広美氏は今後のさらなる成長に向けて、「LINEギフトでしか手に入らない誕生日ギフトを中心とした限定商品のラインアップを充実させていきます。百貨店の化粧品売場と遜色ないようなブランドの展開も目指しています」と語る。
ギフトは受け取った人が初めてそのブランドを利用する経験にもつながる
2015年からサービス提供が始まった「LINEギフト」には「ほしいものリスト」という、ギフト一覧を見て自分が欲しい商品を登録して友だちに公開する機能がある。そのリストを作成しておくと、友だちがリストを見てギフトを贈ることができる。充実した商品のラインアップに加えて、高い機能性を備えている。
ギフトをもらうと同時にすぐにお返しができるという気軽さも、「LINEギフト」が活用しやすいポイントだろう。「LINEギフト」のサービス開始以降、1日の中でもっとも利用された件数と利用者数が多かったのは、2023年のバレンタインだった。「LINEギフト」でバレンタインギフトをもらった男性が、ホワイトデーに「LINEギフト」でお返しするという流れもある。来年はバレンタイン向けのギフト商品も例年以上に力を入れて販売していく予定だという。また、「LINEギフト」は現在、クリスマスやバレンタイン以外にも、いい夫婦の日などにギフト需要の開拓を目指しており、もともと贈る予定がなかったが贈ってみようと思ってもらえるきっかけとなる企画作りにも力を入れていく。
手間や時間をかけずに相手への感謝の気持ちやちょっとした思いを伝えられる「LINEギフト」は、新たなギフト市場を開拓したことで成長を続けている。その成長を牽引するビューティーカテゴリーの勢いは、まだまだ止まりそうにない。