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宝島社が出版社から「ブランドホルダー」へ 編集長勢揃いで4ブランド同時始動、初年度2.5億円目標

NEWMar 3, 2026.高村 学Tokyo, JP
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撮影:SEVENTIE TWO

宝島社が、出版社の枠を越える一手を打ち出した。『smart』『SPRiNG』『sweet』『mini』など人気ファッション誌を擁する同社は3月3日、4つのアパレルブランドを同時に立ち上げると発表した。「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」内に開設する「宝島社STORE」で、3月4日から販売を開始する。平均単価は7,000〜8,000円。初年度売上高は2億5000万円を目標に掲げる。

これは単なる物販拡大ではない。新規事業部を立ち上げ、宝島社が「メディア企業」から「ブランドホルダー」へ進化する意思表明とも捉えることができる。

■編集長がブランドを背負う
今回の最大の特徴は、各誌編集長がプロデューサーとして前面に立つ点にある。匿名の監修ではない。さらに、誌面で世界観を作ってきた編集者たちが、今度は服そのものを作る。ここに今回の挑戦の本質がある。

『SPRiNG』丸山摩紗編集長が手掛ける「オビスアンド(Obis&)」は、トレンドに流されすぎないナチュラルでハンサムな女性像を軸に据える。身長や体形の異なるスタッフが繰り返し試着し、バランスを調整したという。『smart』鈴木香奈子編集長による「ダウンス(DAWNCE)」は、誌面モデルらの「オフの私服」を裏テーマに設計。軽やかな素材感と都会的なシルエットが特徴で、デニムの展開にも力を入れる。

『sweet』の「タイニー エデン(Tiny EDEN)」と『mini』の「カラーミー(colorme)」は社内公募により誕生した。「タイニー エデン」は、甘さと大人らしさを両立。『sweet』山口真澄編集長は、フリルの分量や丈感は何度もサンプルを重ねた末に決めたという。「カラーミー」は、偶然にも参加メンバーが全員アンダー160cm。『mini』見澤夢美編集長は、小柄体形が美しく見えるバランスを徹底検証したと話す。

■50万着ヒットが背中を押した
宝島社はすでにアパレルの物販で成功体験を持つ。2024年にスタートした疲労回復ウェア「リカバリープロラボ(Recoverypro Lab.)」は、当初EC中心の小規模展開だったが、昨年には全国約1,200書店、Amazon、テレビ通販へ拡大。累計50万着を突破した。

出版社の強みは、単なる発信力ではない。編集という審美眼と、全国書店網というリアル販路を持つ点にある。この成功が、今回の本格アパレル参入の土台となった。

■なぜ今、出版社がブランドを持つのか
出版市場は縮小が続く。一方で、ファッションIPの価値は依然として高い。誌面で支持される世界観を、商品として直接マネタイズできれば、収益構造は大きく変わる。宝島社はこれまで、しまむらやイトーヨーカ堂との協業も重ねてきた。商品開発のノウハウは蓄積されている。今回の直販モデルは、その延長線上にあるが、決定的に違うのは「自社ブランド」として所有する点だ。ブランド資産は出版社の中に残る。

■試金石は「ゾゾタウン」
柚木昌久・第2メディアビジネス局長は「イメージは壮大だが、まずはゾゾタウンで成功させることが最重要」と語る。「ゾゾタウン」で数字を作れれば、ポップアップ、リアル店舗、海外展開といった選択肢も広がる。逆にここで伸び悩めば、単なる話題で終わる。出版社発ブランドは過去にも存在したが、ここまで「編集長前面型」で、かつ4ブランド同時立ち上げという規模は異例だ。

出版社が作るのは、もはや誌面だけではない。これまで培ってきた「編集力」を、どこまでブランド価値へ転換できるか。宝島社は、流行を語る側から、流行を保有する側へと舵を切った。出版社のビジネスモデルそのものを書き換える可能性を秘めた今回の挑戦に今後も注目したい。

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