
10月27日、村上世彰氏の長女・野村絢氏らがディー・エヌ・エー(DeNA)株を5.12%取得したことが明らかになった。旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが関東財務局に提出した大量保有報告書によるもので、取得総額は約140億円。
株価はとうとう一時、2,861円(10月28日)まで上昇した。だが市場が一番驚いたのは、「旧村上ファンド系がDeNAに入った」というニュースそのものだ。なぜ土地も不動産も持たない「デジタル企業」に踏み込んだのか?その真意を探るよ。
■土地を持たない企業に踏み込む意味
村上ファミリーの過去の投資には、一つの共通点がある。それは「土地」だ。髙島屋、三菱倉庫、フジ・メディアHD、どれも眠る不動産を抱えていた。「土地を動かす」ことで企業価値を引き出すのが彼らの得意技だった。
だが、DeNAには土地がない。倉庫も工場もない。あるのは、AI、ゲーム、スポーツ、モビリティといった無形の事業群。資産ではなく構造で戦う会社だ。このタイプの企業にアクティビストが入るのは極めて珍しい。「資産を動かす人たちが、資産を持たない会社を買う」、これこそ今回の最大のサプライズだよ。
■南場智子の「AIオールイン」宣言
DeNAが新しいフェーズに入った背景には、南場智子会長の明確なビジョンがある。「DeNAはAIにオールインします。10人でユニコーンを生み出す会社に変わります」と。これは単なるAIへの投資宣言ではない。AIを会社の中心に据え、経営そのものをAI前提で作り替えるという意味だ。AIを一部門のツールとして使うのではなく、社員全員がAIを活かして働く仕組みにする。
そして「10人でユニコーンを生む」とは、AIを使えば少人数でも新しい事業を立ち上げられるというメッセージ。AIが情報収集や分析を担い、人は意思決定と創造に集中する。つまり、10人で100人分の成果を出す会社へ進化するという宣言だ。南場会長の「AIオールイン」とは、AIを「道具」ではなく「経営の骨格」に据えるという決意なんだよ。
■見えない資産に価値を見いだす時代
DeNAの現預金は約900億円、自己資本比率は70%超。財務体力はあるが、PBRは0.9倍台と低迷している。「資金はあるのに、評価されていない」、この構造に旧村上ファンド系が動いた。
DeNAは球団、AIヘルスケア、モビリティ、ゲームなど多層事業を展開しており、データ・顧客・ブランド、そしてAIによる学習モデルといった「見えない資産」を多く抱えている。旧村上ファンド系が見たのは、おそらくこの資産!だろう。アクティビスト側からすれば、「資本効率を高める仕組み」を提示できれば、PBR1倍の壁は容易に超えられるという新しい挑戦でもある。
■11月決算を前に、サラリーマン株主はどう構えるか?
11月にDeNAの決算があるが、その前にどのような心構えでこの株と向き合うべきか?巳之助が一生懸命考えてみたよ。
注目すべきは次の3点。
① 自社株買いの有無(株主へのメッセージだ。これが来ればデカい)
② AI投資の成果をどこまで数字で説明できるか
③ スポーツ・ゲーム事業の安定利益が維持できるか
もしこの決算で、AI事業の具体的成果や投資規模が示されれば、理念から実行へ移ったサインになる。軽い自社株買いでも出れば、株価は3,000円トライの地合いになる。逆に沈黙なら、「次のターンは旧村上ファンド系から」という見方が強まるな。
巳之助は「資本を問いただす旧村上ファンド系」と「AIで攻める南場」で少し迷うけど。
プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。









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