
映画『赤ちゃんはトップレディがお好き』より
米女優のダイアン・キートン(Diane Keaton)が、10月11日(現地時間)にロサンゼルスの自宅で亡くなった。79歳だった。
ダイアン・キートンは1972年公開の映画『ゴッドファーザー』で、知的でシリアスなケイ・アダムズ役を演じ、一躍注目を集めた。さらに1977年の『アニー・ホール』では、明るくコミカルで独特の個性を持つアニー・ホール役を演じ、アカデミー賞主演女優賞を受賞。幅広い役柄を自在に演じ分け、映画史に残る名演技を披露した稀有な女優であった。
ダイアン・キートンの影響力は映画界にとどまらない。彼女はファッション業界でも象徴的存在であり、単なる「オシャレな女優」ではなく、思想や生き方と結びついた「ファッションアイコン」そのものだった。
『アニー・ホール』では、彼女自身の私服をベースにした衣装を使用。ネクタイ、メンズジャケット、ベスト、ハットなどを取り入れた「ボーイッシュ」「マニッシュ」な装いを、知性や個性を表現する手段に変えてみせた。当時としては革新的であり、女性が男性的アイテムを自由に取り入れる「ジェンダーレス・ファッション」の先駆けとなった。
さらに、年齢や流行に左右されないエイジレスなファッションを貫き、自分らしさを優先する姿勢を示した先駆でもあった。ダイアン・キートンの「エイジレス・ファッション」は、年齢に縛られない美学として現代人に勇気を与え続けている。
ダイアン・キートンは、演技とファッションの両面で時代に新しい価値観を示した稀有な存在だった。彼女が貫いたスタイルは「キートンイズム(Keatonism)」として、今後も色あせることなく人々の心に残り続けるだろう。