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【2023-24年秋冬パリコレ・レポート】ファッションに向き合う時の意識を改めて自問する動き

Mar 26, 2023.もりかおりTokyo,JP
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「ヴァレンティノ」の2023-24年秋冬コレクション

2月27日から3月7日まで行われたパリコレことパリ・ファッション・ウイークには、公式参加ブランド以外も含めると100以上のブランドがコレクションを披露した。ミラノ・コレクションではクラフツマンシップへのリスペクトと、スタンダードアイテムを独自にアップデートして差別化を図る傾向が注目された。一方パリでは服と向き合う時の意識を改めて自問する動きが見られたように思う。いずれもファッションに対する愛情を感じるショーだった。

「ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)」は、前シーズンでは花いっぱいの鮮やかなムードを作ったが、今シーズンは近くで見た時の発見や細やかな喜びを大切に、「ファッションへの愛」をテーマに展開した。パッチワークや刺繍、着古したような色合いや風合いなど、服たちを愛でるように作品に愛情を注ぎ込む。アップサイクルではないが、ふるめかしさを新しい服に込めることで、日本の「わび・さび」にも通じる慎ましやかで時間の経過をも美と感じる作品群で魅了した。

「バレンシアガ(Balenciaga)」は今回、原点に立ち返り服自体にフォーカスしたシンプルな見せ方に徹した。会場となったカルーゼル・ドゥ・ルーブルは、かつてパリコレクションのメイン会場だった場所だ。それぞれが独自路線で会場選びに趣向を凝らした結果、今では使われなくなった。なぜあえてファッションショー然としたショー会場を選んだのか?少年時代に憧れた華やかな時代のファッションショーを思い描いたのかもしれない。インスピレーション源となったのも、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)が6歳の時に初めてテーラーで仕立ててもらったパンツであり、その時の感動がファッションデザイナーのきっかけとなったのだという。ドリス同様に、服への愛が着想源だ。パンツをキーアイテムに、解体や構築を重ねたデザインが散見された。そしてメゾン元来のフォルムの探究からなる丸みやシェイプを意識したフーディやドレス群をはじめ、服のパワーを感じる内容だった。もっぱら豪華セレブやショーの演出ばかりに話題が行きがちな昨今のパリコレに異を唱えるデムナの裏テーマが垣間見えた。

自分たちの心地よさだけを信念に、シンプルで時代に流されない服を提案するオルセン姉妹の「ザ・ロウ(The Row)」も、自社ショールームで話題作りやエンタメとは無縁な佇まいでショーを開催した。切り替えや複雑なディテールを要しないカッティングは、素材の良さを際立たせるための彼女たちらしい哲学を感じる。シンプルで静かなほど美しさが際立ったコレクションだった。

一方ひとつのアイテムをキーに展開したアイコニックなコレクションも見られた。「ヴァレンティノ(Valentino)」はブラックタイをテーマにマスキュリンとフェミニンのバランスについて再構築した。バラのモチーフが連なったマイクロミニや、フェザーを飾ったロングガウン、ビーズやスパンコール刺繍など、クチュールテクニックとフェミニンな要素をふんだんに用いてブラックタイで仕上げる。ブラックタイという男性のドレスコードを用いて、ドレスコードに縛られない自由さや多様性を表現した。

「シャネル(Chanel)」はココ・シャネル(Coco Chanel)が愛した花であり、メゾンのアイコンでもあるカメリアをフィーチャーした。カメリアの花が立体やプリントの他、生地に織り込んだり、編み込んだりすることで若々しくキュートな雰囲気に仕上げた。

両者とも、ひとつのアイテムに焦点を当てつつ、俯瞰で見ることで捉え方にバリエーションを持たせた手法が功を奏した。クチュールメゾンの持つ最高級のテクニックと歴史に刻まれたコードがあるからこその強みだろう。

ファッションへの愛情は携わっている人間なら誰しもが持っている感情だろう。そしてその原点は人それぞれだ。多様性もあり、ファッションに対する思いが多種多様に広がっていくほど何が大事なのかが見えにくくなってしまう。今シーズンはそこを明確にしたデザイナーほど心に残るコレクションを発表したように思えた。

 

 

 

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