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会長辞任でも株価は無風 サントリー会長の電撃辞任に市場が冷静なワケ【いづも巳之助の一株コラム】

NEWSep 3, 2025.いづも巳之助Tokyo, JP
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サントリーHD会長の辞任劇という大ニュースの直後だというのに、株価は小動き。市場は意外なほど冷静だ。短期筋も機関投資家も「これは個人の問題だ。サントリー食品インターナショナル(以下SBF)の業績や配当に直結しない」と線引きしたんだな。

▷やはりガバナンス実行スピードは一級品だね
8月22日警察が会長自宅の家宅捜索をし、28日には取締役・監査役全員一致で辞任要求、9月1日に辞任受理。わずか10日で決着だ。まさにサントリーのコーポレートガバナンス・コードがいう「トップマネジメントに一点の疑義も許さない」厳格ルールをF1級のトップスピードで解決したのは流石だ。

▷フシギな企業構造を説明しよう
サントリーHDは非上場。ウイスキー、ビール、サプリメントといった利益率の高い事業はHDの中にある。一方で、上場しているのは清涼飲料の「SBF」だけだ。つまり株主がアクセスできるのは全体の半分にすぎない。でもSBF株を持つ投資家も、HDのガバナンスリスクを背負わされるという、なんともフシギな構造なんだよ。

▷ワンマン船長の功績と怖さ
新浪剛史という人物は、サントリーに来てから米ビーム社を1.6兆円で買収、SBFを上場させ、グローバル企業へと変貌させた立役者。2013年のHDの売上は約2兆円規模だったが、2024年には3兆円超に拡大。SBFも上場から10年で売上を約1.3倍、営業利益を安定的に1000億円台に乗せるまで成長させた。サントリーを「国際企業」へ押し上げ、SBFをここまで引き上げてきたのも、実質的に「ラスボス」新浪氏の手腕だ。一方で、裏を返せば「トップに頼りきる体制」だよな。「決定は即断即決、外から見れば改革派リーダー、内から見れば現場を聞かないワンマン」とも言われていたね。

▷株主はどこを見る?
では、その船長がいなくなった今、株主は何を見て売買を判断すべきか。SBF単体で見れば、2025年1〜6月期は売上8023億円(▲1.4%)、営業利益839億円(▲9.0%)と冴えない。米欧の消費鈍化が逆風だ。ブランド別では「伊右衛門」「BOSS」が堅調だが、全体を押し上げるまでには至っていない。つまり今のSBF株主にとっての判断材料は「HD会長辞任」より「決算数字」の方が重い。株価が無風だったのもそのためだよ。

▷投資家が気にする指標
株価4712円は、予想PERでおおむね19〜20倍、配当利回りは1.5%前後。国内飲料株(キリンHD、アサヒGHD等)のPER15〜18倍、配当利回り2%超と比べれば、バリエーションはやや割高で利回りは物足りない。

そして、一番気になるのが「誰が今後のサントリーの舵を取るのか?」だ。カリスマが去った後、再び同族色が強まれば、透明性が下がり、社内チェックが効かなくなる。こうなってしまったら、株は買わない方がいい。カリスマリーダーがいなくなった今、次のビッグな船長が決まるまで、サントリーは「おも舵いっぱい」だ。

▷巳之助メーター 1ニョロ 短期は素通りだ   
(1ニョロ=素通り 2ニョロ=監視 3ニョロ=今だ!)   
中期は米欧の需要期待。でも、なんか成長する要素が見つからないや。

■プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。

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