②日本市場には全くフィットしなかった「フォーエバー21」や「H&M」などのグローバルSPA
③原宿マーケットのパワーダウン
①については、コロナ禍の克服については、SPA(アパレル製造小売業)業界最大手のインディテックスや業界第3位のファーストリテイリングについてはすでにコロナ禍以前の水準に復帰しているが、第2位の「H&M」のコロナ禍からの回復が遅れている。ファーストリテイリングにSPA業界第2位の座を明け渡すのは時間の問題と見られている。SPAという言葉を考案したドナルド・フィッシャー(Donald Fisher)が創業者であるSPA業界第4位の「ギャップ(GAP)」はコロナ禍でさらに厳しい状況におかれている。SPA企業とは絶えず拡大して量産効果を得ることが成長の絶対条件であって、すでに「H&M」や「ギャップ」はSPAのマラソンレースにおいては脱落し始めている。ましてや規模がその10分の1にも満たない「フォーエバー21」に至っては、言うまでもないだろう。
②本来なら日本市場では、そのブランドの全世界総売上高の10%程度の売り上げがあるはずだが、「ザラ」「H&M」はピーク時ですらせいぜい5%程度の水準だろう。一方、日本のラグジュアリーブランドについて、その全世界シェアを見てみると、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」が10%(2000億円)、「グッチ(GUCCI)」が10%(1000億円)、「シャネル(CHANEL)」が10%(1000億円、化粧品含む)、「エルメス(HERMES)」が15%(1200億円)といった水準だろう(推計は筆者)。グローバルSPAの日本シェアは、ラグジュアリーブランドの半分以下なのだ。これが日本シェア10%までいくのは難しいだろう。日本ではグローバルSPAはなかなか根付かなかったという言い方もできるかもしれない。
③原宿というマーケットのパワーダウンは本当なのだろうか。よく考えてみると、原宿からは「ギャップ」の旗艦店がなくなっている。最初は明治通りと表参道の交差点に店を構えていたが、JR原宿駅前へ移転し、2019年にクローズしている。ラフォーレ原宿を日本の本拠にしていた「トップショップ」、東急プラザ原宿に入居していた「アメリカンイーグル」はブランドの日本撤退に伴って閉店している。これに前述した「フォーエバー21」、今回の「H&M」がクローズしている。正直言って、家賃も安くはない原宿に店を構えているメリットはないと言うのが本音だろう。本音と言えば、何回も移転が噂されている「ザラ」原宿店も契約のシバリがなければ出たいのがホンネと言う噂もあるくらいだ。コロナ禍のこの2年5カ月で明治通り北側(明治神宮側)の原宿の地価・家賃はかなり下落している。今回「H&M」が抜けた後もその後はなかなか決まらないという。「カフェとスマホ屋がなんとか商売になるぐらい。洋服屋はお呼びじゃないね。ファッションで商売になるのはスニーカー屋ぐらいだろう」と現在の原宿の状況をある不動産業者は嘆いている。環境の良さから、ラグジュアリーブランドが注目する明治通りの南側のいわゆる表参道、そして青山通り南側の南青山に比べて、原宿の苦戦は続きそうだ。
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