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「エルメス」の中国発ブランド「シャンシア」が日本でポップアップを開催、CEOが語る中国ラグジュアリー・マーケットの変化

May 17, 2018.Tokyo, JP
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2009年にアーティスティックディレクター兼CEOのジャン・チョン・アー(Jiang Qiong Er)が「エルメス(HERMÈS)」と共に立ち上げたブランド「シャンシア(上下/SHANG XIA)」が日本で2回目となるポップアップを昨年に引き続き阪急うめだ本店で開催した。ポップアップのため来日していたジャン氏に話を聞いた。

SEVENTIE TWO(以下、SVT):日本では2回目のポップアップですが、なぜ日本を選んだのでしょうか?また今後はどのような展開を予定していますか?
私たちの製品とスタイルは全てものづくりにこだわっていて、シンプルながらストーリーが豊富なので、日本人が共感できるブランドだと感じている。日本のマーケットは成熟しており、中国は若く成長が早い。日本でポップアップをすることで製品や価格に対して顧客の意見を聞くことができ、日本に出店するときのセレクトがしやすくなると考えた。2回のポップアップを通して、日本の消費者に対する理解を深めることができた。彼らにはブランドに対してすごく興味を持ってもらっているので、これからも長い時間をかけて、(阪急うめだのような)コラボレーションをして行きたいと考えている。今後はまず上海の浦東空港に出店し、その後は香港のLane Crawford(レーン クロフォード)、そして4月に北京のSKPに北京2号店を出すことが決まっている。

SVT:店舗や商品の企画に「エルメス」は関与していますか?ブランドは順調に成長していますか?
私は現在CEOとアートディレクターとしてブランドを運営しているが、ラグジュアリー・ブランドとしての経験が豊富な「エルメス」は親のような存在。彼らは中国の文化を尊敬していて、中国発祥のブランドである「上下」をこれからグローバルで成長させたいと思っている。色々アドバイスはもらうが、コレクションのデザインなどは全て一人で考え、最終決定も私がする。グループとしてのシステムやポリシーは共通している。

ラグジュアリー・ブランドを作りたかったので、はじめの10年間は利益を求めず、ブランドの価値と基礎を創造することに努めてきた。製品とサービスと体験、様々な角度から顧客を満足させることを意識している。業界からの期待値はとても高く、LVMHやケリングは中国に来るときに必ず「シャンシア」の店舗を見にくる。

SVT:中国大陸、香港、台湾、パリの店舗の中で特に好調なところは?
それぞれ状況が違うので比較は難しい。例えば上海の旗艦店は1000平方メートル、パリは100平方メートル、北京は200平方メートルと面積が全然違う。各地域でそれぞれの役割をこなしているという印象。面白いのは中国の店舗は顧客の8割が中国人で2割は外国人、パリは95%が外国人であること。

SVT:中国のラグジュアリー・マーケットについて教えてください。
過去の10年間、中国のラグジュアリー・マーケットの変化はたいへん大きかった。今の顧客は若い世代で、彼らはロゴやブランドのような短絡的なものではなく、自分のテイストやセレクトにとても自信を持っている。昨今のマーケットの一番の特徴は買うときの判断基準としてこうした自信が大きく関わるようになってきたこと。2つめの変化は、経済が成長するにつれて、20代から50代、学生から経営者に至るまで自分の”文化身分”を探求している。これはパスポート上のアイデンティティとは違い、着ている服やライフスタイル、人に会うときにどんなお土産をあげるかなどで表現される身分。こういった背景の中で「SHANG XIA」は良いタイミングで市場に現れ、消費者の”自分らしいライフスタイルの実現”に対する需要を満たしている。中国マーケットを成熟したマーケットと比べると消費市場だけでなくブランド側の状況も違う。例えばヨーロッパは完全にものづくりの循環が揃っているが、中国は全くそれがない。そのためブランドにとってはヨーロッパでラグジュアリーグッズを作ることが当たり前だった。しかし私は10年かけて「シャンシア」中心のものづくりの循環を作ってきた。今は30種類のものづくりの職人と仕事をしていて、ウールならばモンゴルに行き、ヤクのモヘアを探すならばチベットに足を運ぶ。雲南省や四川、江西など原料は様々な場所にある。職人を都心まで呼んで制作してもらうのではなく、その土地の土や水が揃った環境で作ってもらうことが大事だ。

SVT:「シャンシア」のポリシーを教えてください。
私たちのプロダクトには東洋の精神と美学が宿っている。中国の昔の服装を見てみると、バッグを手で持ったり腕にかけたりはするが絶対に肩にはかけない。だから私たちも手で持つ形のバッグをシグネチャーとして作っている。”精神を取って形を捨てる”がこのブランドの精神。古の中国のデザインを取り入れ東洋のエレガントな魅力を込めつつ、現代の素材を使ってデザインする。海外でよく表現される“中国風”ではなく、東洋の精神と美学と気品を表現したい。古い祖先が作った最高の手作りの技術と材料とインピレーションを現代の人に紹介し、昔のものをもう一度私たちの生活に取り入れるというのが「シャンシア」の使命。現代の最高峰の技術や感性を用いて博物館に収蔵されるようなものづくりをすることに力を注いできた。実際に過去の3年間で、1800年前から存在する技術を用いて1年半かけて作ったものや、中国の瞑想空間など私たちの作品が大英博物館やフランスのギメ博物館、ルーブルのフランス国立美術館に収蔵されている。

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