
ファッションEC「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を展開するZOZOは7月31日、2026年3月期の第1四半期決算を発表した。売上高は540億2800万円(前年同期比7.2%増)、営業利益は169億2000万円(同6.4%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は113億7600万円(同2.4%増)と、堅調な増収増益を記録した。
主力の「ゾゾタウン」事業は、前年同期比3.4%増の374億8500万円を計上。売上全体の約76.4%を占めており、安定したEC基盤を武器に、堅調な成長を続けている。また、「Yahoo!ショッピング」や「ヤフオク!」といったLINEヤフーとの連携によるコマース事業は、前年同期比21.8%増の53億9800万円と二桁成長を記録、広告事業も同9.3%増の29億700万円と底堅い内容だった。一方で、法人向けのB to B事業は前年同期比27.9%減の3億7300万円と落ち込んだ。
注目されるのは、今年4月に行われた英国のファッションECプラットフォーム「リスト(LYST)」を運営するリスト社(LYST LTD)の買収だ。約231億円を投じて全株式を取得し、完全子会社化。今期から連結対象となったリスト社の売上高は10億1700万円で、前年同期比21.8%増と2桁成長を記録している。現時点での売上構成比は全体の4.7%にとどまってはいるものの、「LYST経済圏」ともいえる海外市場、欧米ブランドとのタッチポイントが構築できたことでシナジー創出が期待できる。
さらに注目は、「恋愛経済圏」だ。ZOZOは6月にマッチングアプリ「ZOZOマッチ」の提供を開始し、新規領域への参入を果たしている。ZOZOが実施したアンケート調査によれば、恋愛中の消費行動において約9割の人が「洋服を買いたくなる」と回答しており、出会いの創出がファッション需要を喚起するという仮説に基づき、「ZOZOマッチ」をスタートした。単なる出会い系マッチングアプリではなく、「出会いから購買へ」という新たなユーザージャーニーの構築を目指し、ECサイトを超えたサービス展開に舵を切っている。
決算発表と同時に、ZOZOは通期業績予想の修正も発表。これは、リスト社買収に伴う償却費の算定が確定したことによるものだ。売上高の予想は従来の2241億円から2315億円へ上方修正。一方、営業利益は698億円から692億円、純利益は485億円から478億円へと若干の下方修正となった。償却負担を反映しつつも、安定した収益構造を維持している。
今後の焦点は、英国「リスト」との連携によるグローバル展開の加速と、マッチング領域でのユーザー定着率だ。特に、マッチングアプリ「ZOZOマッチ」がファッション需要をどこまで引き上げるかは、同社の非物販事業モデル確立に向けた試金石となる。
ZOZOは今、ECの枠を超えた「ライフスタイル・テック企業」への進化を加速させている。ファッションという枠組みにとどまらず、人々の「気分」や「関係性」にまで寄り添うサービス設計によって、次のフェーズへと歩みを進めている。