資産60億ウォン、成功した女性実業家、韓流スターのような美貌――。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の妻、金建希(キム・ゴニ)氏は、歴代ファーストレディーの中でも、特に注目されている。もともと美術を専攻し、美術展企画会社の代表を務めていたこともあり、ファッションセンスには定評がある。
今年6月、尹大統領の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議出席に同行した際には、白を基調としたドレスにネックレスやブレスレッド、バングルなどのアクセサリーを組み合わせ、国際外交の舞台に登場。優雅な装いで、各国のファーストレディーの中でも際立った存在感を発揮した。この時、「ヴァン クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)」のスノーフレークシリーズのネックレスや、「カルティエ(Cartier)」のブレスレッドなどのハイジュエリーを着用したことが知られている。
一方、9月の英女王エリザベス2世の国葬に参列する際には一転、衣装は「オールブラック」に統一し、アクセサリーは一切着けなかった。こうした衣装はすべて金建希氏が自ら選び、基本的には自費で購入しているという。日常生活では「ディオール(Dior)」など海外の有名ブランドをさりげなく着こなす一方で、韓国の中小企業の「プチプラ」製品を着用することもある。
金建希氏が着用した服やバッグ、靴などは韓国のSNS上で大きな話題となり、注文が殺到し、完売することも珍しくない。このためか、オンラインモールなどでは金建希氏の顔写真を商品PRに無断で使う業者が後を絶たず、社会問題になるほどだ。女性の憧れでありながら、身近さも感じさせる――これが人気の秘密のようだ。
■年の差12歳、「バリキャリ」女性実業家として成功
金建希氏は2012年、40歳の時に12歳年上の尹錫悦氏と結婚した。2人は共通の知人である僧侶を通じて知り合った。当時、尹錫悦氏の全財産は、銀行口座にあった2000万ウォン(約206万円)だけで、金建希氏をあきれさせたという。だが、金建希氏は「自分以外には、尹錫悦氏と結婚できる人物は永遠に現れない」と考え、結婚に踏み切ったというエピソードが知られている。
金建希氏は親しみを込めて尹錫悦氏を「アジョッシ(おじさん)」と呼ぶ。一方、尹錫悦氏は金建希氏のことを「深夜2~3時まで本を読んだり、コンピューターの前に座ったりしている。休む暇もなく勉強し、熱心に仕事をする人」と称えている。
金建希氏のファッションセンスの基礎になっているのは美術。自身が代表を務める美術展企画会社は、結婚前の2007年に設立した。2015年にはロシア系アメリカ人の画家・マーク・ロスコ展を企画。25万人を動員する盛況となり、芸術の殿堂「最優秀賞」を受賞するなど高く評価された。その後も現代彫刻の巨匠ジャコメティ特別展、現代建築の父ル・コルビュジエ特別展など、大型現代芸術家の展覧会を次々に企画し、成功させてきた。
2016年、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領が絡んだ国政関与疑惑「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」の捜査で尹錫悦氏が名をあげ、スター検事の仲間入りをすると、妻の金建希氏にも注目が集まった。この時、金建希氏は「夫がハイレベルの公務員だからといって、自分は主婦業に専念しているわけではない。尹錫悦の夫人ではなく、金建希の仕事を続けたい」と語り、夫の地位とは関係なく、自身の仕事を継続する意思をはっきりさせている。
■金建希流「内助の功」、本格始動へ
注目が集まると、金建希氏への攻撃も激しさを増した。大統領選挙期間には学歴詐称や論文盗作など、さまざまな疑惑が取り上げられ、金建希氏が謝罪に追い込まれる一幕もあった。尹錫悦氏は大統領の配偶者を補佐する部署を廃止し、配偶者への礼遇を減らすことを公約に掲げた。
尹錫悦氏が当選を果たすと、金建希氏はファーストレディーの役割について次のように述べた。「『令夫人』という呼称より『大統領配偶者』という表現が良いと思う」「配偶者の役割は固定されたものではなく、時代と社会像に符合する国民の要求に従うものと理解している。私は個人的に当選者(尹錫悦氏)が国政に没頭できる環境を作ることが最も重要な役割だと考える」。
韓国メディアは、金建希氏が「静かな内助」に専念すると伝えた。だが、彼女が意図するのは「家庭において、夫の外部での成功を支える妻の功績」という古典的な「内助の功」とは異なるようだ。
これまではファーストレディーとして尹大統領に同行する以外、単独での公開活動はほとんどなかった。代わりに、水害復旧現場やホームレスの施設で身分を明かさずにボランティア活動に取り組んだり、福祉保護を受けられずに死亡した人たちの葬儀に非公式に参列したり、虐待で死亡した子供の墓参りに足を運んだ。
金建希流「内助」とはこうした分野で大統領を補佐していくことにあるようだ。金建希氏によって韓国のファーストレディー像がどう変わるか、彼女のファッションとともに注目していきたい。