45歳を過ぎてパーソナルの筋トレを始めたのですが、現在なんと2年半も続いています。家族や友人からも驚かれていますが、何より自分が一番驚いていて、「私、頑張ってる!」と自画自賛しています。私は体を動かすことがとにかく嫌いで、学生時代も一度も部活やスポーツクラブなどをしたことがありません。体育の授業や運動会に至っては、「望んでいないのに無理やりさせられたことを少し恨んでいる」と言っていいレベル。汗をかくのはもちろん、遊びですら体を動かすのは苦痛、筋金入りの「運動嫌い」でした。
仕事柄、美容面でのエイジングについては、自分なりの考え方・受け止め方があります。しかし身体の衰えに関しては、考えようともせずかなり無頓着でした。そんな私が急に運動を始めようと思ったのは、好きな服を着て綺麗な姿勢で歩くおばあちゃんになりたいと思ったから。でも正直に言うと、もっと切実な理由がありました。40代に入って東京に来てから、駅の階段などで本気で躓きそうになることが多かったのです。「このままだと、日常生活すらままならなくなるぞ」と、未来に不安を感じて怖くなったのです。
年齢を重ねることは自然なことで、徐々にできなくなることは増えてくるでしょう。でも、「元々体力ないから仕方ないよね」と諦めるのではなく、「歳をとってもできる限り自分の足で好きなところに行きたい」と考えたら、身体のエイジングと向き合う気持ちが少し生まれました。そして始めた筋トレは、まさにそんな気持ちの背中を押してくれる習慣でした。
筋トレがおすすめな理由
女性が運動を始めるとき、よくおすすめされるのがヨガやピラティスです。確かにヨガやピラティスは、ちょっとオシャレでウェアやアイテムを揃える楽しさもあります。でも、運動神経が良くない、体を動かすのが嫌い、体力に自信が無い、そんな運動に対してネガティブな気持ちが多い人こそ、ヨガやピラティスよりも筋トレがおすすめだと私は思います!
1.息切れしない、体力がなくてもできる!
子供の頃から運動習慣が無い私は、少し走ると息切れします。なんなら階段ですら息切れします。しかし筋トレは基本的に、ジョギングなどの有酸素運動のように息切れするようなペースで行うものではありません。体力が無くても無理なく続けられます。ダンベルなど重さの負荷もその人の筋力に合わせることができます。私は最初、ダンベルさえ持たずに腕を回すだけのトレーニングでした。
2.体が硬くてもなんとかなる!
私は子供の頃から体が硬く、一度もきちんと前屈ができたことがありません。ヨガやストレッチ系エクササイズは、まず最初の姿勢を取ることができず、挫折しがちです。しかし筋トレは複雑なポーズを取るものではありません。自重や軽めの負荷をかけて気持ちよく筋肉が伸びる程度で十分。柔軟性がなくても問題ありません。そして筋トレを続けたことの嬉しいおまけとして、動かすことにより徐々に筋肉に柔軟性が出てきて、小児期や10代の頃と比べても体が柔らかくなりました。また、背中の筋肉を使うようになったことで肩への負荷が減ったのか、肩こりが軽減されたのはすごくありがたいことです。
3.パーツごとに鍛えられる
筋トレは身体全体ではなく、腕だけ・脚だけとパーツ単位でできます。“体幹もお尻も脚もまとめて均等に使えます!“みたいなトレーニングやポーズは、実はレベルの高い話です。私のように運動が苦手な人は、基本的に身体の使い方が下手です。全身に意識を向ける必要がある動きはできません。無理に行うと、肩に変な力が入ったり腰を痛めたりしがちです。慣れるまでは腕だけ・脚だけとパーツごとで分けてトレーニングすれば良いので、筋トレの方が初心者向けだと思います。
「ひとりでできる」が、最大の魅力
そして、何より筋トレの素晴らしいところは、個人プレーであること。一般的にヨガやピラティスはグループ制。運動嫌いさんは、他人と一緒に運動することは苦痛な人が多いのではないでしょうか。私は、とにかく人と一緒には運動をしたくない。周りと同じようにできなくて恥ずかしい気持ちや、皆のペースを乱して迷惑をかけることが、体育の授業の時の嫌な思い出と重なるのです。その点、筋トレは自分だけ。トレーナーさんとの相性はありますが、自分の希望を伝えて理解してくださるトレーナーさんに出会えれば、誰にも遠慮せず自分の身体と向き合えます。
オンラインでのレッスンも良いと思いますが、1人で動画を見て行うトレーニングはお勧めしません。我流になりがちというだけでなく、そもそも運動が嫌いな人が、自発的に定期的な運動の習慣をつけることは難しいはず。誰かサポートしてくれる人と“約束する”のがサボらず続けるために大切だと思います。
人生ずっと運動に対してネガティブなイメージしか無かったのに、筋トレを始めてから、ほんの少し前向きに捉えられるようになりました。元々運動が好きな人や得意な人は、ヨガでもピラティスでも、もっとハードなスポーツでも、何でも楽しめると思います。でも運動が苦手な人こそ、自分のペースでのんびり進めていける筋トレは結構お勧めです!
今回の「彩肌通信」では、「筋トレ」をテーマにしてみました。自分に合った運動を見つければ、人生の後半がぐっと楽しく、しなやかに変わっていくのではないでしょうか。これからも皮膚科医ならではの視点で、無理をせずキレイを楽しむためのヒントをお伝えしていきます。どうぞ次回もお楽しみに。
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■横井彩 プロフィール
「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」院長。皮膚科専門医、医学博士。2003年に秋田大学医学部を卒業した後、同大学皮膚科で研鑽。2017年藤田医科大学アレルギー科にて講師。2021年に「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」を開院。日本美容皮膚科学会や日本香粧品学会などに所属。