買収総額は190億円で、そのうち180億円は銀行借入。年商500億円規模に対してこの借入比率は重い。インターメスティックは粗利率76.8%と高水準で返済能力はあるが、「現状のゾフの勢いは止めたくない」から、「メガネスーパー内部でリストラを一気に進めて」収益改善を出せるかが勝負だ。
また、買収するHorus HDは上場していない持株会社で、その傘下に「メガネスーパー」がある。直近の連結決算では売上281億円、営業利益18億円、純利益11億円と一見黒字。だがこれは「不採算店舗の閉鎖や特損の圧縮、金融支援の効果」で見せかけの「整理後の一時的な黒字」にすぎない。つまり、なんちゃって黒字だな。それに売上高営業利益率は6.5%程度で、「ゾフ」の10%超、「ジンズ(JINS)」の15%前後と比べ大きく劣る。
▷どうしても比べたくなるのがJINSだ
JINSは売上800億円超、営業利益120億円超で、インターメスティックの3倍規模。機能性やリピーター戦略に強く、利益率も安定して高い。対する「ゾフ」はトレンド感や広告コラボで若年層に強い。今回のM&Aで単純合算すれば「ゾフ」+「メガネスーパー」で770億円規模に膨らみ、数字上はJINSに肉薄する。しかし利益率での差は依然として大きい。
ブランド戦略も難題。「ゾフ」はトレンドを仕掛けるが、「メガネスーパー」はシニア層や補聴器など、異なる顧客基盤を持つ。地方や高齢層では「メガネスーパー」の看板を残す方が合理的だろう。当面は二枚暖簾の共存かな。
▷投資判断は、勝ち負けのパターンで読む
・勝ち=不採算体質を改善し、規模メリットで利益急拡大。いよいよJINSとの二強時代へ。
・負け=統合作業が難航、赤字が再発。借入返済で財務悪化、株価は下落。
実際、株価は発表直後に3,000円台まで上昇したので、市場はこのM&Aを「歓迎」なのかな。だがこの水準は既に高値圏。PERは20倍台に差しかかり、短期的には材料出尽くしの反動リスクありだ。むしろ2,200〜2,400円台まで調整したら、冷静に拾うチャンスとみた。
いずれにしても、今回のM&Aは、業界の地図を塗り替える可能性を秘めた大勝負だ。「勝つか負けるか?!サアサア、張った張った!」
▷巳之助メーター 1ニョロ 素通り
(1ニョロ=素通り 2ニョロ=監視 3ニョロ=今だ!)
株価は高値圏。まずは買収シナジーが数字に出るかを監視すべき。
■プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。