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需要拡大で生産体制は三極化 ミズノが硬式野球ボールの「聖業」をカンボジアへ

NEWJan 8, 2026.セブツー編集部Tokyo, JP
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ミズノは1月7日、カンボジア・プノンペンに子会社「ミズノスポーツカンボジア」を設立し、2026年6月から事業を開始すると発表した。新会社では、硬式野球ボールの製造を担う。需要の拡大を背景に、供給体制の安定化と生産能力の強化を図る。

ミズノは現在、岐阜県養老町の「ミズノテクニクス」と、中国・上海の「上海ミズノコーポレーション」の2拠点で硬式野球ボールを生産している。今回のカンボジア進出により、グローバルでの供給網を三極化し、地政学リスクや需要変動への耐性を高める狙いがある。

硬式野球ボールは、ミシン縫製や革の成形など手作業の工程が多く、機械化が難しい製品だ。わずかな個体差がプレーに影響を与えるため、高度な技術と徹底した品質管理が求められる。量産品でありながら、工芸品に近い性質を持つのが特徴だ。

ミズノにとって硬式野球ボールは、単なる製品ではない。1906年創業のミズノは、1913年から野球ボールの製造を続けてきた。創業者の水野利八は、当時ばらつきのあった硬式野球ボールの規格統一を提唱し、日本における品質向上の礎を築いた。その歴史から、社内では硬式野球ボールの製造を「聖業」と位置付けている。

新設されるミズノスポーツカンボジアでは、約200人を雇用し、年間約10万ダースの生産を目指す。社長には大橋健一氏が就任する。日本で培った製造ノウハウを現地に移管しつつ、品質水準は既存拠点と同等に保つ方針だ。

ミズノのものづくりを支えているのは、長年技を磨いてきた職人たちである。米国メジャーリーガーや日本のプロ野球選手が愛用するグラブを手がける職人も多く在籍する。その一人、ミズノテクニクス波賀工場の岸本耕作氏は、2024年に厚生労働省の「卓越した技能者(現代の名工)」に認定された。これまでにも、グラブ職人の坪田信義氏、バット職人の久保田五十一氏が同認定を受けている。

カンボジアでの生産開始は、コスト対応や量的拡大だけが目的ではない。ミズノが長年培ってきた野球用品の技術と思想を、次世代へ、そして世界へどう継承していくのか。その試金石となるのが、今回の新工場といえる。硬式野球ボールという原点を軸に、ミズノのグローバル戦略は新たな段階に入った。

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