
2025年から2026年にかけて、経営者同士の発言やメディアのアンケートを横断して見ると、ある共通点が見えてくる。業界も事業内容も違う日本の大企業の社長たちが、「今年の日本株の本命」に伊藤忠商事を挙げている。
学生人気、経営者評価、投資家評価。評価軸は違っても、伊藤忠商事は上位常連だ。2025年3月期の連結純利益は約8800億円規模。非資源分野の利益比率は約7割。景気や資源価格の変動に左右されにくい収益構造が完成している。派手さより「ブレずにリスクを取る経営」が評価されているんだ。
他の商社と決定的に違うところは、伊藤忠商事は「条件がそろった現実しか動かさない会社」だ。感覚では動かない。投資判断の前提は明確で、資本コストを上回るか、3期累計で付加価値が出るか、ダメなら撤退基準にかかる。
JR東日本との不動産経営統合が象徴的だ(2025年12月23日発表)。JR東日本と伊藤忠商事は、不動産子会社の経営統合に向けた基本合意を発表した。この判断が評価される理由は、数字が語っている。JR東日本の2024年度の営業利益は、運輸事業が約1760億円、生活ソリューション事業が約1808億円、さらに2031年度計画では、運輸事業が約2500億円、生活ソリューション事業が約4500億円であり、成長の重心は完全に不動産と街づくりへ移る。一方、伊藤忠都市開発の2025年3月期売上高は約588億円。分譲、賃貸、物流、商業、ホテルまで含めた実績がすでに揃っている。
伊藤忠商事は、まさしく「待つ」経営だ。JR東日本が持つのは、首都圏を中心とした圧倒的な人流データ、社有地や沿線土地という再現不能な資産だ。伊藤忠商事が持つのは、住宅、物流、アリーナ、商業を横断した用途設計、そして回転型と保有型を組み合わせた収益モデルだ。土地だけでも、ノウハウだけでも足りない。条件が完全に揃ったから、経営統合という形を取った。ここに「待つ経営」の完成形がある。「待つ」といっても、何もしないわけではない。裏側では、「数字を集め」「撤退基準を決め」「責任を引き受ける準備」をしていたんだ。
岡藤正広会長の「AI投資は浮き足立つな」。この言葉も感覚論ではない。伊藤忠商事は、AIを売上にどう乗せるか、既存事業の原価を何%下げるか、どの部署が責任を負うか。ここまで落ちない限り、大きく賭けない。実験と実装を切り分ける。これも数字の経営だ。
巳之助は本来、自分でプロダクトしない企業には辛口だ。だが、伊藤忠商事は違う。作らない代わりに「投資額」「撤退基準」「資本コスト」のすべてを自分の責任で背負う。だから、ここだけは迷う。伊藤忠商事は、短期で夢を見る株ではない。条件がそろった案件だけを、淡々と積み上げる株だ。数字で測り、撤退ラインを先に引く。それだけを、愚直に続けてきた結果だ。巳之助の適正購買株価は1,850円〜1,950円。数字と撤退ルールが崩れない限り、長期で付き合える。
プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。



















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