9月19日から25日までの期間イタリア・ミラノで開催されたミラノファッションウィーク参加ブランドから注目ブランドを抜粋し、レポートする。
「プラダ(Prada)」の2024年春夏コレクションのコンセプトは「流動性」。人間の形態を構成する流動性の概念に着目し、プラダ財団の保管庫のショースペースである会場には、抽象的な壁が設置され、モデルの通過により絶え間なく変化するような配置が採用されている。ウィメンズは、チュールのような軽く柔らかい素材を使用したアイテムが目立つコレクションとなった。メンズウェアからインスピレーションを受けたフォーマルなフォルムを保ちながらも、体を優しく包み込み、絶対的な自由を与えるドレスが印象的だ。本コレクションの究極の目的としては、自分の内側にある身体を常に意識し、解放することだという。
アレッサンドロ・ミケーレの後任としてクリエイティブ・ディレクターに就任したサバト・デ・サルノによる「グッチ(GUCCI)」の2024年春夏コレクションには、全世界の注目が集まっている。タイトルは「グッチ アンコーラ(GUCCI ANCORA)」。「アンコーラ」はイタリア語で「もう一度、再び」の意味を持ち、デ・サルノの「『グッチ』は人々がもう一度ファッションと恋に落ちる機会を与えてくれる」という思いが込められている。
デ・サルノは、ミケーレの装飾主義的で豪華なコレクションとは打って変わって、実用主義でミニマリスト的なコレクションで「グッチ」での華々しいデビューを飾った。「グッチ」の公式ウェブサイト上でデ・サルノは、「私の最初のコレクションは地図です。 それは個人的なものであり、私のデザイン、私の感性、私の情熱に関するものです。 これらは私がグッチでさらに探求したいアイテムです」と述べている。また、「グッチ」のコレクションの発表会場となったグッチ・ハブには、同ブランドのアンバサダーであるNew Jeansのハニをはじめ、ジュリア・ロバーツ、ライアン・ゴズリングなど名だたるセレブたちが集まったことでもSNS上で話題を呼んだ。
「トム フォード(TOM FORD)」は今回、2022年11月の売却以降初となるコレクションを発表した。創業デザイナーのトム・フォードに代わって新クリエイティブ・ディレクターに就任した、ピーター・ホーキンス(Peter Hawkings)のデビューコレクションでもあった今回、「トム フォード」には注目が集まった。1960年代から70年代初頭に人気を博し、英国版『VOGUE』の表紙を初めて飾ったアフリカ系アメリカ人モデルのドニャール・ルナからインスピレーションを受けた今回のコレクションは、洗練され魅惑的な独特の世界観を生み出している。しかし同時に、創業デザイナーをリスペクトし、最大限に過去の「トム フォード」らしさを汲んだ今回のコレクションは、これまでのファンの期待にも答えるものとなったと言えるだろう。
「ジル サンダー(JIL SANDER)」は、テーラリングと最新技術、フェミニンとマスキュリン、普段着と華やかさ、日常的なものとクチュールの美点の融合を表現したコレクションを発表した。仕事着、修道衣、スモック、ユニフォームなど型のあるものを洗練された現代的な表象へ昇華させる、軽やかでエレガントでありながらも破壊的なコレクションという点で非常にユニークだ。「ジル サンダー」らしいモノトーンがベースでありつつ、鮮やかなピンクやグリーン、イエロー、オレンジのアイテムもデザイナーであるメイヤー夫妻が今回表現したかった「現代」を表す注目のアイテムだ。
9月25日からは、フランス・パリでパリファッションウィークがスタートする。「CFCL(シーエフシーエル)」、「マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)」、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」、「ジュンヤ ワタナベ(JUNYA WATANABE)」など日本発ブランドも多く名を連ねるラインアップは必見だ。会期は9月25日から10月3日まで。