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髙島屋の株価が急騰 CB消却で安心は得たが資本の行き先は示されていない【いづも巳之助の一株コラム】

NEWJan 8, 2026.いづも巳之助Tokyo, JP
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髙島屋の株価が、突然急騰した。2026年1月6日の終値は1,861円(前日比+161円、上昇率9.5%)。材料は、2028年満期ユーロ円建て転換社債の買い入れと消却、いわゆるCB(転換社債)対応だ。ただし、この値動きを「成長期待」と見るのは違う。

今回の上昇の正体、本質はこれだ。将来、借金が株に変わって株数が増えるかもしれなかった不安を、先にお金で消した。CBは1月6日時点で額面比161.148%という高水準だった。安い判断ではない。それでも髙島屋は、株価が転換価額を上回り、株の希薄化が現実になりかけたタイミングで、火種を消しに行った。判断自体は、まあ合理的だ。

今回の対応は、資金繰りの問題ではない。2026年2月期第3四半期累計は、営業収益3538億円、親会社株主に帰属する純利益297億円、金融事業は営業利益42億円と増益だ。追い込まれての決断ではなく、株価上昇によって先送りできなくなった問題に対応した、という性格が強い。

では、なぜ今までやらなかったのか、ここに違和感が残る。株価が低い間、CBはただの借金だった。転換されなければ、希薄化は起きない。だから、高いコストを払ってまで処理する理由がなかった。今回の対応は、中長期で描かれた「予定調和の資本政策」というより、状況が変わったから動いた「対症療法」に見える。

髙島屋は、もう「静観されている会社」ではない。旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが、共同保有分を含めて6.55%を保有しているという事実は、数字以上に重い。彼らが見ているのは、短期の株価ではない。ガバナンスと資本の使い方だ。今回のCB買い戻しも、市場では安心材料として評価された。

だが、ガバナンス視点で見れば、別の読み方もできる。資本政策が、株価上昇という事後事象に反応して動いたとも映るからだ。さらに言えば、土地は相変わらず十分に活用されているとは言い難い。自社株買いと配当は引き上げた。だが、余剰資本をどう再配分するのか、どの事業に資本を集中させるのか、その説明はまだ弱い。

百貨店は伸びない。海外も決定打に欠ける。不動産は眠っている。金融事業も、何を軸に拡大するのかが語られていない。この状態が続けば、株価の上昇余地は自然と限定される。だから次に出てくる要求は、確実にもう一段、踏み込んだものになる。事業の切り分け、資本の再配分、経営陣の交代、他社との資本提携、あるいは会社そのものの売却。どれも、突飛な話ではない。

成長しない会社に対して「資本効率をどう高めるのか」、その答えを出せない経営には必ず別の選択肢が提示される。いまはまだ、予告編だ。だが、何もしなければ、本編は始まる。巳之助の企業内防衛の業務経験から見ても、これは十分に起こり得るよ。うそじゃない。

直近の決算を見ても、先頭に立つ事業が見えない。国内百貨店は減益、海外店は地域差が大きい、不動産は含み益止まり、金融事業は黒字だが、なにで伸ばすのかが語られていない。百貨店でもない。海外でもない。不動産でもない。金融でもない。結局、何屋さんなのかが、まだ定まらないのは特に問題だ。

フジテレビと旧村上ファンドが正面衝突している今、市場の視線は一時的に外れている。だから静かだ。だが、それは安全という意味ではない。今回のCB対応で下値不安は消えた。一方で、株価をもう一段上げるには、事業の答えが必要だ。現在の利益水準と事業構造を前提にすると、巳之助の適正購買株価は1,600円〜1,850円。1,800円台は安心を織り込んだ水準。その先に行くには、髙島屋は何で稼ぐ会社なのかを示さなければならない。

プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。

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