
東京地検特捜部が、東証グロース市場に上場していたAIスタートアップのオルツを本格捜査していることが、9月29日に分かった。オルツは2021年から2024年にかけて長期にわたり売上高を水増ししていたことが発覚し、8月末に上場廃止。粉飾規模は最大で売上高の9割に達するとも指摘されており、AI業界だけではなく資本市場を揺るがす大規模な不正事件へと発展している。
特捜部は、創業者で元社長の米倉千貴氏ら経営陣が広告代理店などに対し、架空の請求を伴う循環取引を持ちかけていた疑いがあるとみて、金融商品取引法違反容疑での立件も視野に捜査を進めている。第三者委員会の報告書によると、オルツは広告代理店4社に約138億円を広告宣伝費として支出したほか、研究開発費として2社に約16億円を支出。その後、計約137億円を「売上」として自社に戻す循環構造が確認されたという。
オルツは生成AIやデジタルクローン技術の開発企業として注目を集め、上場時の時価総額は約190億円に達していた。しかし、粉飾決算の発覚で信用不安が一気に広がり、株価は急落。最終的には1株5円まで暴落し、時価総額は約1億8000万円と新規上場時の100分の1以下にまで縮小した。上場廃止により、個人投資家を中心に甚大な損失が生じている。