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森英恵、生誕100年記念展が島根・石見美術館で開幕 没後初の大規模回顧展

NEWSep 27, 2025.高村 学Tokyo, JP
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ニューヨークのショー会場で、1970年代半ば 写真提供:森英恵事務所

世界的なファッションデザイナー、森英恵(1926〜2022)の生誕100年を記念する大規模展覧会「生誕100年 森英恵 ヴァイタル・タイプ」が、島根県立石見美術館で9月20日から12月1日まで開催されている。同館の開館20周年を記念する企画展であり、森英恵の没後では初めてとなる本格的な回顧展だ。

森英恵は、戦後日本のファッション界を切り拓いた存在として知られる。1950年代には映画衣装の制作で頭角を現し、家庭を持ちながら社会で活躍する新しい女性像として注目を集めた。1961年には「ヴァイタル・タイプ(Vital Type)」という概念を提唱し、自立し快活に人生を切り開く女性像を打ち出した。自らもその生き方を体現し、同世代の女性たちに大きな影響を与えた。

その後、1965年にニューヨーク、1977年にはパリに拠点を広げ、アジア人として初めてパリ・オートクチュール組合の正会員に加盟。日本の布地や職人技を積極的に取り入れながらも、世界基準のブランドを築き上げ、日本のファッション文化を国際舞台へと押し上げた。

今回の展覧会では、オートクチュールのドレスや写真、資料など約400点を展示。高品質な素材と職人技が結実したドレス群はもちろん、帯地や絹織物など日本産素材を用いたオリジナル布地、さらにニューヨーク・メトロポリタン美術館が所蔵する作品の「里帰り展示」も見どころとなる。森がいかに日本の美意識を国際的なファッションに融合させたかを実感できる構成となっている。

また、展覧会ではデザイナーとしての活動にとどまらず、文化的な取り組みにも光が当てられる。ファッション誌『流行通信』の創刊や、東京・表参道に「ハナヱ・モリビル」を設立したことなど、デザインとメディア、都市文化を横断する森の活動を紹介。松本弘子(モデル)、田中一光(グラフィックデザイナー)、奈良原一高(写真家)ら、同時代を代表するクリエイターとの協業も取り上げられる。こうした取り組みを通じて、森英恵はファッションを単なる衣服のデザインにとどめず、文化や社会を映し出す表現として位置づけてきたことが浮かび上がる。

さらに関連イベントも予定されている。10月4日には、孫でありモデルとして活躍する森星が登壇するトークイベントを開催。森英恵の生き方や作品の魅力を現代的な視点から語る場となる。また、森英恵のアトリエで培われてきた手仕事の技を体験できるワークショップも行われる予定で、世代を超えて森のクリエイションに触れられる機会となる。

戦後日本の女性デザイナーとして国際舞台で成功を収めた森英恵の歩みは、ファッション史だけでなく社会史としても重要な意味を持つ。生誕100年という節目に開かれる今回の展覧会は、日本のファッションが世界に羽ばたいた原点を知るとともに、これからの時代におけるクリエイションの在り方を考える契機となりそうだ。

◾️「生誕100年 森英恵 ヴァイタル・タイプ」概要
会場:島根県立石見美術館
会期:2025年9月20日(土)~12月1日(月)
開館時間:9:30~18:00(展示室への入場は17:30まで)
休館日:毎週火曜日(9月23日は開館)、9月24日
会場:展示室C・D
観覧料:当日券 一般1,300円(20名以上の団体料金は1,050円)、大学生600円(20名以上の団体料金は450円)、高校生以下無料
※小中高生の学校教育活動による観覧の引率者は無料になります。※申請が必要です。
※各種障がい者手帳、被爆者健康手帳をお持ちの方およびその介助者(1名様まで)は入場無料。

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