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松原千明の死から京都ファッション界の歴史を振り返る

Nov 19, 2022.三浦彰Tokyo,JP
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BS朝日特番「すみれ&松原千明 ニューヨーク親子旅~先取り!グルメ&夢に挑戦SP」に出演する松原千明(左)。

タレントの石田純一の元妻で女優の松原千明(64歳)が10月8日に急逝していたことが最近分かった。彼女のお兄さんである松原毅氏は、京都のテキスタイルコンバーター丸増の社長だった。丸増は1949年創業で吉忠、キング、ロンシャンなどと並ぶ京都の生地問屋として1970年代後半のピーク時にはプリントブームに乗って年商150億円の売り上げを記録したこともあるが、その後1990年代以降は急激に衰退し、創業した丸山一族も手を引いて、従業員12人、売り上げは6億円まで減少し、2015年には、新興テキスタイルメーカーの宇仁繊維に買収されている。前述したテキスタイルコンバーターとしては上場企業だったロンシャンも姿を消し、やはり上場企業のキングもアパレルメーカーに転身し、吉忠はテキスタイルの他にマネキン、アパレル、不動産などの多角化で生き残っているのが現状だ。

京都のファッション企業として忘れられないのが、1990年代のイタリアブームに乗って「アンドレルチアーノ」というブランドを引っ下げて登場したアパレルメーカーのイタリヤードだ。「アンドレルチアーノ」の購入者のほとんどは、イタリアブランドだと思って買っていたという笑い話もある。そう言えば、創業者の北村陽次郎は前述したテキスタイルコンバーターのロンシャンの社員から独立した人物だった。FC方式で拡大していたが1994年にはFC店は160店、売上高156億9400万円、経常利益17億1000万円をマークした。1995年には大阪証券取引所2部及び京都証券取引所に上場し、「室町の風雲児」「ベンチャーの旗手」と呼ばれていた。しかし、その後投資失敗、「アンドレルチアーノ」の類似ブランド多発などで急激に追い込まれ、2002年1月22日に自己破産。負債総額は58億円。いまだに語り継がれるイタリヤード伝説だ。

京都のファッション業界の本丸は言うまでもなくワコールホールディングスである。このインナーファッションの王者に通販のセシール、訪販のシャルレ、ドイツのインナーファッションの雄トリンプなどさまざまな挑戦者が現れたが、そのたびにその挑戦をはねのけて来た。

しかし、そのワコールHDもコロナ禍で2021年3月期には11億1500万円の営業赤字を記録した。実にこれは1964年の上場(大阪証券取引所第2部および京都証券取引所)以来初の屈辱だった。すでに2019年3月期でも、営業利益が前年の半分以下に減少するという低迷現象が見られていた。今年に入ってからも、コロナ禍からの回復が遅れ苦戦が続いているのを重く見たワコールHDは、ついに事実上の早期退職制度にあたる「フレックス定年制度」の実施に踏み切った。募集人員は250人。来年1月に応募を開始、同年3月末に退職する。対象は勤続15年以上で45歳以上の正社員で、販売職は除く。応募者には退職金に特別加算金を上乗せする。

こうした一連の動きの責任をとる形で、2018年4月1日からワコールHDの中核事業会社であるワコール社長に就任していた伊東知康氏が11月30日付で辞任するという事態に陥っている。ワコールHDの安原弘展社長が来年3月末まではワコール社長を兼務する。同時にマーケティングの根本的見直し、エリア戦略の再構築、全店舗を対象にした個店別採算重視などの施策を行う。人事面でも組織体制の見直しやスリム化、マネジメント人数の削減、経営陣の若返りも行われる予定だ。

ワコールHDは今まで幾多の危機を乗り越えて来た名門企業だ。インナーウェアはアパレル特性に加え化粧品的な商品特性も合わせ持つ強さがあり、また「ワコール」そのブランド力は世界的に浸透しつつあり、今回の危機も乗り越えてほしいものだ。しかしワコールのような優良企業でも赤字になり早期退職募集をするのかと思うと、日本の消費力が本当に弱っているのを実感せずにはいられない。

 

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